個人的な映画・ドラマ日記です。
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感想

和製マイケル
「和製マイケル・ジャクソン」と検索すると、抜群の歌唱力とダンスに定評のある三浦大知が出てくるが、個人的には「和製マイケル」といえば東山紀之である。
ステージやパフォーマンスにマイケルの特徴的なダンスや演出、衣装を取り入れていたとのことで、よく目にした東山ムーンウォークは素人目にもかっこよかった。
お年を召してからも体形や体力を維持されていた高いプロ意識も通じるものがあり、何よりご本人がマイケル・ジャクソンの大ファンであることを公言されていることから(三浦大知は「和製マイケル」と呼ばれることをあまり歓迎していない模様)、「和製マイケル・ジャクソン」の称号は今でも東山紀之にこそ相応しいと思っている。
本作が公開された当時は49歳。お顔はそれなりに年齢が見えるものの、ダークブラウンの革ジャンとジーンズがこよなく似合い、さすが和製マイケルといった風格。
時代劇で月代(さかやき)も爽やかな同心を演じられたこともあり、黒い羽織に帯刀もお似合いだったが、やはり革ジャンは「日本で最も似合うんじゃないか」と。日本一が言い過ぎなら「日本の中年男性の中では断トツに」であれば反論はないかしら。

筋肉のついたスリムな体形もマイケルと似てる感じだよね

三浦大知さんはもう少しがっちりしてるイメージ
軽い水谷

演じる桐谷健太は、どうしてもauのCM「浦島太郎」のイメージが強い。ちょっぴり頭の軽そうなキャラクターだった気がするが、CM曲の「海の声」で第58回日本レコード大賞の優秀作品賞を受賞、第67回NHK紅白歌合戦にも出場している。あの三線(さんしん)はご本人が実際に弾いていると知り、少し見る目が変わった。
悪いイメージはまったくないものの、俳優としての桐谷健太は申し訳ないが苦手だった。滑舌の悪さがどうしても気になる上に幼稚に感じられ、作品に集中できないからというのが理由。
だが本作ではその「ちょっとアホの子」っぽさが逆によかった。
口も頭も軽く、時に裏切る不安を視聴者によぎらせ、時にシンブンシのやり方に疑問を呈する水谷は、それなりにシリアスなドラマの中で、ある種清涼剤的な役割を果たしていた。
ちなみに画像検索してみたら、口髭+アゴ髭を伸ばした(ゴーティスタイルというらしい)写真が何件かヒットし、いつものツルッとしたオールバック姿より断然イケメンだった(個人の感想です)。
地上波としてはかなり攻めた犯罪ドラマ『インフォーマ』(2022年)は、髭面で主演とのことだし、探してみようかな。

警察にシンブンシとの関係を疑われて、盛大に泣きながら嘘八百を並べ立てるシーンがめっちゃツボだった

何だかんだで最後まで裏切らなかったよね
前半の警察はほぼ空気

映画『予告犯』の捜査員2人は本作でも最初から出ているが、映画ではW主演にも近かった吉野(戸田恵梨香)は第3話から、市川(坂口健太郎)はオマケ程度にしか出てこない。
代わりに「刑事は足で稼ぐ」のを信条とする矢崎(大西信満)が、サイバー犯罪対策課の奥に設置されたソファに陣取り、何かと捜査員に噛みついて引っ掻き回すのだが、これが本当に口だけ。
「俺のやり方を見てろ」と啖呵を切ってNPO法人事務所に向かい、ガムをクチャクチャさせて上から迫ったはいいが、河原にいいようにあしらわれ、手も足も出ない。
途中から復帰した吉野からは「あなたのような刑事が必要なの」と言われていたが、え?どこが?ねえ、どこが?
演じる俳優さんは嫌味っぽい表情や口調がよかっただけに、あの無能さは残念だった。
吉野についても、ただでさえ若くスリムすぎるほど細い戸田恵梨香が、おっさんばかりの中で非常に浮いており、空回りしているようにすら感じる。
『予告犯』は年齢の近い生田斗真や坂口健太郎なども出演していたのでまだましだったが、本作では小娘が無理して偉そうにしている感が拭えないし、吉野の疑問や推理もちょっとご都合主義っぽかった。
前半でも公開裁判に挟まれるように、警察側の場面も結構あったのだが、役に立たない上に公安も出てこず、捜査本部も設置されないせいか、印象が薄い。いつも狭いサイバー犯罪対策課の室内で捜査員がごちゃごちゃ言って吉野の復帰を待っているだけだったし、後半の聞き込みも矢崎と吉野だけ。
役割として捜査組織は必要だが、それなら吉野は最初から出してガンガン物を言わせて矢崎とも絡ませ、警察側での見せ所も作ればよかったのに。
最終話の終盤で出てきた市川(坂口健太郎)が佐久間の発信場所を突き止め、刑務所とリモートまで繋いでいたのには笑った。おいおい後ろのおっさんたち最後まで役立たずかよと。

とにかく吉野ありきで他はザコみたいな展開はつまんなかった

3話まで出てこなかったのは、他の作品とのスケジュールの兼ね合いとかかな?
被告人は気の毒

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シンブンシとしては「身内が冤罪の被害者になった気持ちを理解してほしい」とのことだったが、被告人たちはネット上で晒し上げられ、社会的に抹殺されるほどの人間ではない。
確かに全員、よろしくない裏の顔があったが、それは誰でも大なり小なり持っている。どこを切り取っても完璧に清廉潔白な人物など滅多にいないし、だからといって全世界に晒されるほど悪いとは思えない。
お嬢様面の裏でいじめや恐喝をやらかしていた凜花は、確かに罰されるべきだが、あれほどのネットリンチを受けてよい理由にはならない。
決まっていた大学の推薦も取り消されたかもしれないし、高校生には酷すぎるのではと思う。
河原については、恨んでいそうな元会員に目星をつけ、シンブンシを出し抜いて証言させた手並みはお見事。証人をバカにするのはいただけないし、寄付金もグレーゾーンらしいが、それくらい腹黒く、ずる賢くなければ組織をまとめてはいけないとも言える。
シンブンシの本来の目的が明かされた時、隣にいる妻を、目をむいて凝視する河原は、実にいい表情をしていた。
そういえば1億6000万円の隠し財産は結局どうなったの?河原の焦りようからすると実際の口座っぽかったけど、勝手に寄付しちゃうのは流石になくない?
樹里に至っては対象が伯父ときた。彼女の両親は健在で、伯父の所有するアパートに住まわせてもらっていたらしいが、姪をターゲットとはこじつけが過ぎるような…。
本人もあまり素行がよいとは言えず、小さな女の子の顔に試供品の口紅でグリグリ落書きなんて根性が悪いし、公開裁判も舐めていたが、あれだけ炎上すれば仕事どころか外も出歩けなくなるだろうし(実際引きこもっていた)、独身の若い女性がこれからどうするのかと心配になった。
林田(息子)の女性への盗撮とストーカー行為は個人的には許しがたい。スタンガンまで持ち出しているし。公開裁判や裁判で晒されていることへの恐怖や不安が見られなかったので、晒してOKかどうかというよりは晒す意味がなかった。
佐久間が直接手を下したのはこいつだけなので、佐久間のためにも軽傷であってほしい。

仲の悪い親族や知り合いとかのとばっちりだったら一生許さんわ

最後の林田(息子)は、すでに父親に縁を切られてたのにね…ちょっとかわいそうかな…
掘り出し物は橋本さとし

刑務官の田淵を演じる橋本さとしは、田淵が初めて出てきた時から「あ、ちょっといい俳優さんじゃない?」と気になっていた。
それだけでなく「なーんか同じようなトキメキ(?)を感じたことあるなぁ」「この人どこかで見たことあるような…デジャヴ?」「いや…声も何か聞き覚えがあるような…」などとドラマそっちのけで唸っていたが、それもその筈。TBS系『TOKYO MER』の危機管理対策室室長、駒場卓サマだった。お目当てだった主演の鈴木亮平以外に、素敵なオジサマ見つけて得しちゃった♥とはしゃいでいた彼の人ではないか(ちなみに敏腕看護師の菜々緒もよかった)。
キャリアとしては1989年、劇団☆新感線の公演でデビュー。声優、ナレーターとしてもご活躍とのこと。
『科捜研の女』『警視庁捜査一課9係(続編は特捜9)』『救命病棟24時』『相棒』など有名シリーズ、『下町ロケット』『VIVANT』『イチケイのカラス』『黒執事』など、多くの作品に出演。
『プロフェッショナル 仕事の流儀』『歴史秘話ヒストリア』ではナレーションもお務め。
アニメ『トランスフォーマー カーロボット』のファイヤーコンボイの声優も担当。
…そりゃ記憶になくても初見じゃないわ。

のりまき、オジサン好きだよねぇ

失礼な!渋好みと言って!
捏造の理由は?

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イマイチ納得できなかったのは、警察、科捜研、検察、裁判所がグルになって、なぜ真犯人を野放しにしてまで無実の人間を犯人にでっち上げたのかということ。
花山は再審請求を認めない方針の上、若手の裁判官・新谷が出した告発文を権力づくで抑え込んだりと分かりやすい腹黒なので、自分が出した判決が誤っていたなど決して認めないのも理解できる。
あれほどまでに各機関が見事な連係プレイを見せるには、最初から全員が繋がっているという、相応の癒着があって然るべきではないのか。
お互いに利害があり、または弱みを握っており、本人または子息が真犯人だったという裏事情があるのではと推理していたが、作中では納得できるだけの説明がされなかった。
そもそも、事件の捜査段階から無関係の荻原を嵌めて犯人に仕立て上げる意味が解らない。その辺りは林田(父)が「有能だがダーティな刑事」ということで済ませられている。そんな杜撰な捜査、冤罪のための捏造をすぐに行う刑事が、今までエースとしてやって来られるほど警察組織は腐っているものだろうか?…ハッ、だから神奈川県警!?
予算とか多忙とか、職務上の当然の良心を裏切るほどのものだろうか?人が誰かを陥れる時は、大金か保身、よんどころない身内のためと相場が決まっている。
「メンドクサイからコイツが犯人でいいや」と4人が4人とも考えて、死刑への流れ作業を行ったのだとしたら、そういう頭の弱い怠け者は即刻消えていただきたいし、ネットの公開裁判など霞むほど恐ろしい闇である。

この辺りの設定はもう少し作り込んでほしかったな

神奈川県警ってどゆこと?

そこはシーッ
正義とは

本作の主軸が裁判と刑事事件であるだけに、作中では各人の「正義」が表れる。
花山の語る「大過なく社会が運営されているという安心感」こそが正義であり、真実よりも追求されるべきものという論自体には頷けるが、主語が「裁判官」とつくと首を傾げる。
司法の場に飾られている天秤と剣を持つ女神像は、司法、裁判の公正さを表す象徴である。
天秤は正邪を測る「正義」、剣は「力」を象徴しており、「剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力」に過ぎず、正義と力が法の両輪であることを表している。現在は目隠しをした女神像が主流となっているが、それは前に立つ者の顔を見ないことを示し、法は貧富や権力の有無に関わらず、万人に等しく適用されるという「法の下の平等」の法理念を表している。
裁判官にはあくまで公正な裁判が求められ、花山の語るところの「国民の安心感」は裁判官の正義に含まれていないと見做して差し支えないだろう。
「大過ない社会の運営」は、政治家や官僚と始めとする国を運営し守る者に求められるものであり、真犯人を野放しにして手っ取り早く犯人をひねり出すことではないし、証拠を握り潰して再審請求を退けることでもない。そんな安心感は幻影に過ぎない。
むしろ無実の人間の人生の無駄を、少しでも食い止めるべく勇気を出して再審を認めることが正義である筈なのだ。
とはいえ実際はどうなのか分からないし憶測にすぎないが、まあ普通なら体裁は悪いし出世にも響くし、抱えている案件も多いしで、再審を歓迎する裁判官は多くはないのではないだろうか。
少なくとも佐久間や田淵のように、自らの人生を賭けて他者のために動く者はごく少数だろうし、愚か者と冷ややかな目を向ける者も出てくるだろう。
ではお前はと問えば、万事において自分なりの正義の理念は持っているが、絶対にシンブンシのメンバーにはならない。関係者だったならそれなりの支援や働きかけはする。だが赤の他人のために、社会的には犯罪である公開裁判などに足を突っ込みたくない。
だから佐久間や田淵には「嘘でしょ!? そこまでやる!?」という気持ちが強い。
1か月後には佐久間以外の保釈許可が下りたとのことだが、田淵は刑務官ではいられないし、執行猶予中の水谷も心配。
もちろん佐久間は罷免だろうし、執行猶予がついたとしても、この先の人生はどうなるのか。あ、その時は平沢の出番か。禁固刑でなければ弁護士という道もある。
ちなみに死刑から無罪が確定となった場合の冤罪による刑事補償金は、身柄を拘束された1日あたり上限の1万2500円が支払われるケースが殆どのよう(最低は1000円)。
荻原の場合はざっくり18年として8200万円余り。
警察官や検察官の違法・不当な取り調べによる精神的苦痛に対する補償も請求できそうだが、思ったより安くてびっくり。
袴田事件の再審無罪が確定した袴田さんには、約2億1700万円を支払う決定が出されたが、こちらは逮捕から約47年7か月間の身柄拘束に対する刑事補償。
お金はないよりはあった方がいいが、人生の半分以上を、それも壮年期から中年期を奪われて、今さら大金を貰っても補いがつくのか、自分には分からない。
荻原は40代半ば。若くはないがまだ間に合うと思いたい。
もともと再審請求のための弁護団がついていたようだから、これからの闘いに心配はいらなさそうだが、精神的に病むことなく、喜びに満ちた自分らしい生き方を見つけてほしいと願う。

村井國夫のあのいいお声で言われると、うっかり納得しちゃいそうになるけどね

村井國夫も好きそうだよね?やっぱりファンなの?

いやまぁイケオジ俳優枠にはもちろん入ってますけど