個人的な映画・ドラマ日記です。
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本記事はネタバレを含んでいます(非表示にしていません)。予めご了承ください。
画像はすべてイメージ画像です。実際の映像とは関係ありません。
作品情報
タイトル:ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子
脚本:古家 和尚
原作:内藤 了
制作:関西テレビ放送
公開:2016年7月12日 – 9月6日
放送:フジテレビ系列
上映時間・放送時間:全9回(各54分) ※初回のみ拡大放送
ジャンル:ミステリ,クライムサスペンス,警察
評価:★3.5/5.0
※出演者は「登場人物」を参照
登場人物(出演者)
一部原作と混同している可能性あり。各話の主要登場人物は省略。
藤堂 比奈子(波瑠)
警視庁刑事部捜査第一課厚田班所属。階級は巡査。25歳。長野県出身。
小学生の頃に両親が離婚し、母子家庭で育つ。警察官になった年に母親は他界。
母に贈られた八幡屋礒五郎の缶入り七味を持ち歩き、あらゆる飲食物に振りかけることから変人扱いされている。
また携帯しているメモ帳に事件のイラストを描くことで、事件の詳細をすべて記憶するという特技を持ち、過去10年に都内で発生した未解決事件と性犯罪の容疑者リストがすべて頭に入っている。
厚田 巌夫(渡部 篤郎)
警視庁刑事部捜査第一課厚田班の班長。警部補。50歳。
比奈子を内勤員から厚田班に抜擢した。
石上女史とは古くからの知り合い(元夫婦)。
東海林 泰久(横山 裕)
警視庁刑事部捜査第一課厚田班所属。巡査長。31歳。
殺人犯に異常な憎悪を向けており、時に犯人を半殺しにするほど殴ることもある。
単独行動が多く、比奈子に対してはひどく冷淡。
かつて刑事部のエースだったが、5年前に女子中学生殺人事件の模倣犯に妹を殺害され、逮捕の際に犯人を殺しかけたことから出世コースを外れた。
倉島 敬一郎(要 潤)
警視庁刑事部捜査第一課厚田班所属。巡査部長。33歳。
「忍」と名づけたバイク(原作ではKawasaki Ninja 650またはカワサキ・ニンジャZX-9Rと記述がある)をこよなく愛し、「恋人」と公言する。
比奈子に好意を抱いているが空回り気味。
清水 良信(百瀬 朔)
警視庁刑事部捜査第一課厚田班所属。25歳。
所轄から厚田班に移動してきた。
石上 妙子(原田 美枝子)
帝都大学医学部の法医学教授。監察医。55歳。
周囲からは密かに「死神女史」と呼ばれている。
愛煙家でチョコレートがカロリー摂取源。検死の後はよく焼き肉を食べに行く。
片岡 啓造(高橋 努)
警視庁刑事部捜査第一課片岡班所属の班長。警部補。40歳。
東海林に捜査の邪魔をされ、腹を立てつつも刑事としては認めている。
三木 健(斉藤 慎二)
警視庁所属の鑑識官。34歳。
独特の口調とオタク気質から周囲に変人扱いされることもあるが、鑑識官としては優秀。
月岡 真紀(佐藤 玲)
警視庁所属の鑑識官。22歳。
新人のため現場に慣れておらず、動揺することも多い。
中島 保(林 遣都)
ハヤサカメンタルクリニックに勤務する心療内科医。専門は脳科学と臨床心理学。28歳。
帝都大学大学院工学部の学生時代に女子中学生殺人事件の第一発見者となり、進路を変更した。
将来は少年鑑別所などで心理検査を行う監察技官になりたいと考えている。
早坂 雅臣(光石 研)
ハヤサカメンタルクリニックの院長。
西連地 麗華(伊藤 麻実子)
比奈子行きつけのメイドカフェ「萌オさまカフェ」の店長。
普段からお嬢様口調とロリータファッションに身を包んだ上品で優しい女性だが、実は空手3段。
密かに三木と交際中。
藤川(不破 万作)
東海林の情報屋。
各話あらすじと感想
第1話「SWITCH」

強制わいせつ容疑など過去3度の検挙歴がある宮原秋雄(清水優)の遺体が発見された。
遺体の状況は3年前に殺された女子高生の遺体と酷似しており、宮原が襲撃されているとみられる凄惨な録画映像も残っていた。だが検死の結果、傷は本人がつけたものであるという。
映像は動画サイトで拡散され、何者かの関与が認められることから、単純な自殺ではないと警察が睨んでいた矢先、比奈子の同期で親友・交通課の鈴木仁美(篠田麻里子)が撲殺される。
感想
原作はすべて読んでおり、地上波の連ドラで猟奇遺体の描写はどうするのかなと思っていたら、まさかのガッツリ再現。攻めるなぁ。
お茶しながら軽く見始めたが、開始早々キャンディを詰められた女子中学生の遺体が出てきて、「原作でもそうだった」と思い出して慌てて止めた。
宮原の遺体の死後数日を経た皮膚の色や浮いた血管、変色した血液など、できる限り原作に沿ったと思われる渾身の様子に、感心すると同時に期待が高まった。
対して仁美の遺体はイマイチ。死に顔を映すには妥当なきれいさだったが、原作の凄惨さはなかった。
ドラマのタイトルが『ON』のわりに、第1話で大友が仁美単体の殺人犯として早々に逮捕され、ここからの展開はどうなるのかと心配に。
仁美役の篠田麻里子はイメージぴったりだったが、大友役の三浦貴大は、実母に虐待を受けて育った超絶イケメンを演じるには健康的すぎる。個人的には顎が細く神経質な感じの俳優がよかったかな。間宮祥太朗とか柏原収史とか、『マークスの山』の高良健吾なんかいいかも。
スタイルを気にする仁美が、本当は好きなのに決して飲まなかったココアを比奈子が供える原作シーンは入れてほしかったが、比奈子の人物設定がそもそも原作とは真逆なので仕方ないかな。
第2話「ICE」

空き地に乗り捨てられた冷凍車から2体の冷凍遺体が発見される。2人は兄弟、殺害後に冷凍、遺棄されたとみられた。
一方、東京拘置所では1人の死刑囚が変死した。石上(原田美枝子)によると、先日、拘置所で謎の自死を遂げた仁美殺しの犯人・大友(三浦貴大)と同様のケースだという。
冷凍遺体遺棄事件を追う厚田班は、冷凍設備のある霜川商店にたどり着くが、住人である筈の父親と3人の子供の姿がない。ところが裏庭の大型冷凍庫の中から、父親と娘の遺体が見つかる。
感想
まさかの大友猟奇自殺。ドラマでは殺人犯の1人としての登場だった模様。
さらに大友役に推した間宮祥太朗がここで出演。
第2話「ICE」はドラマオリジナルだが、原作にあったかな?と勘違いするくらい違和感がなかった。
一家を暴力で支配した父親・霜川幸三役の螢雪次朗(ほたる ゆきじろう)は、いろいろな作品で見かける俳優さん。特に刑事ものでは悪徳刑事から温厚な先輩警察官まで七変化の名脇役で、この方が出てくると「今回は悪玉?善玉?」と、作品そっちのけでまず気になってしまう。
第3話「CUT」

近隣住民から幽霊屋敷と呼ばれる洋館で、身体の一部が切り取られた4体の遺体が発見される。
倉島(要潤)と聞き込みに行った比奈子は、洋館に雨合羽を着たお化けがいたと証言する少女と出会い、少女の母・佐和と親しい佐藤都夜(佐々木希)とも知り合う。
都夜はお化けの正体は佐和のストーカーではないかと言うが、遺体に着せられたオリジナルのドレスや遺体を切りとった刃物から、比奈子は犯人がデザイナーではないかと推測する。
一方、石上は不可解な自殺を遂げた宮原、大友、鮫島の脳の同じ個所に、腫瘍が発生していたという共通点を突き止める。
感想
原作の都夜は、元モデルなのはドラマと同じだが、食べすぎでパンパンに太った中年女性で、最初は単なる気のいいおばちゃんと認識されていた。だからこそ裏の顔が怖かったのだが、まさか佐々木希を激太りさせるわけにもいくまい。
ストーカーに硫酸をかけられ背中が爛れたという設定はうまいなと思ったが、服を着ている限りは佐々木希が美しすぎるので、顔にも多少の傷を残す方が、モデルを続けられない説得性が増したと思う。
女性たちの遺体が飾られた場所は廃墟となった古い洋館という設定だが、どう見ても公民館や事務所然とした建物だったのが惜しい。
遺体が着ていた衣装も、赤いドレスはまあまあだったが、生地も安っぽくデザイナーが精魂込めて縫い上げた代物とは見えなかった。
第4話「MEMORY」
洋館で発見された遺体の皮膚を縫い合わせ、ボディスーツを作っていた都夜は、比奈子の顔の皮膚も手に入れようとハサミを突きつける。比奈子は隠し持っていたナイフを握るが、東海林と中島が救出に現れ、都夜は逮捕された。
宮原と鮫島の死に際の映像がテレビ番組で放映される。出演した中島の上司・早坂(光石研)は「神の裁き」と呼び、凶悪犯罪の抑止力になると明言した。
テレビ局に匿名で送りつけられたDVDには、他にも複数の人物の自殺映像が残り、厚田(渡部篤郎)は「何者かが一連のできごとを公表しようとしている」と指摘。故意に自殺を誘発している者を突き止めるよう指示を出す。
第5話「MEMORY」2nd

中島が第一発見者となった5年前の女子中学生猟奇殺人事件と酷似した、女子高校生の遺体が発見された。比奈子の心配をよそに、中島は捜査協力を快諾。
比奈子と厚田は石上から、早坂と中島が執筆した「ネグレクトが原因で犯罪に手を染める人間の脳に、直接刺激を与え感情を操作する」という未発表の論文を見せられる。
倫理的な観点から研究は頓挫したというが、石上はどこか腑に落ちない顔。
一方、東海林は猟奇自殺した5人が全員ハヤサカメンタルクリニックと接点があることから、早坂の仕業ではないかと詰め寄るが、証拠を持ってくるよう言われてしまう。
第6話「LEAK」
口腔内に大量の100円硬貨が詰め込まれた遺体が公園で発見される。
解剖の結果、特殊な器具を使って硬貨を無理やり流し込まれたと判明。所持品はなく、指紋も焼かれていた。
聞き込みに出た厚田と比奈子は、転倒した老人・稲富信吾(浜田晃)を助け、自宅だという老人たちのシェアハウス「十八家」に送り届ける。
再び硬貨を詰め込まれた遺体が発見された頃、比奈子は石上から、中島が高度な知能犯を収容する「精神・神経研究センター」に入所し、警察に捜査協力をすることになったと聞かされた。
東海林は情報屋の藤川(不破万作)と接触するが、情報提供を断られた上、事件や比奈子の情報を提供するよう恐喝される。
第7話「AID」

東海林が比奈子の異常性を疑い始めた矢先、藤川が刺殺され、東海林は疑惑をかけられる。
巷では除草剤を使った服毒自殺が4件立て続けに起こり、遺書から「AID」という自殺を幇助した何者かの存在が浮かび上がった。
捜査中の比奈子は交番勤務の原島(モロ師岡)と再会。新人時代の東海林を鍛えた原島は、命の重みを知る東海林が藤川を殺す筈がないと信じていた。
感想
原作では自分勝手すぎて納得のいかなかった原島の妻&原島エピソードが変更されていた点が、個人的にはとてもよかった。
ちょっと描き方が薄い気もしたし、思いとどまった相手の自宅まで襲撃しなくてもとは思うが、自殺志願者に除草剤を与えて苦しませるやり方は「自殺者への直接的な憎悪」に起因している方が分かりやすい。
原作の自殺志願者の1人である、亜希ポジションだった「萌オさまカフェ」のスタッフ・きらりに対しては、亜希以上に嫌悪感がわいた。
カフェでは麗華とペアを組み、おそらく麗華には優しく接してもらい、恨みなどない筈だが、客に聞こえるところで麗華の悪口を言うのは、本人が思い詰めていようがいまいが恩知らずでしかない。
自分の状況を言い訳にして、他者を攻撃したり迷惑をかけたりする人間は好きではない。それは助けを求めているのではなく、単に甘ったれているだけだと思う。
そういう人を受け入れて自己満足でなく救おうとする麗華は、ドラマでも原作でも好きなキャラの1人。
ただ原作にある「温かいごはんや心のこもったお総菜」を最期に口にできる人間は、病でもなければそうそう自死を選ばないし、自殺を考えるような人間が「助けて下さい」と声を上げることは物理的にも精神的にも難しいのではないだろうか。
勇気を振り絞って助けてほしいと頼んだ相手に断られるかもしれない恐怖は、声を上げる大きな障壁となる。断られたからじゃあ次、と考えられるフットワークの軽い人は、そもそも自殺するタイプではないし、周囲に恵まれている場合が多い。
ちなみに原作で麗華に救われた亜希は、伊集院綺羅燐(いじゅういん・きらりん)という萌えネームで萌オさまカフェの人気メイドになっていることが第7弾『BACK』で明かされており、ドラマの「伊集院きらり」はそこからと思われる。
第8話「CHAOS」
東海林に罵られ、刑事を辞める覚悟をした比奈子。
そんな折、拘留中の都夜が脱走した。都夜は逮捕後も比奈子に強い執着を抱いていたことを危惧した厚田は、東海林に比奈子の警護を命じる。
一方、都内では動物の猟奇死体が複数発見されていたが、最初の犯行は比奈子の故郷、長野県で起きており、徐々に南下していた。
比奈子らは殺された動物の種類や数などから、メッセージ性を読みとる。
感想
複数のカラスの惨い姿は心が痛み、他の動物の死体も出てきたら嫌だなと思っていたが、話だけで済んでホッとした。
ホワイトボードに貼られた付箋に描かれた比奈子のイラストは可愛くて、不謹慎ながらちょっとほっこり。いや内容は人間の目玉入り猫の生首とかなので洒落にならないのだが。
それにしても東海林の比奈子への反発や嫌悪は過剰な気がする。
自分は犯人を問答無用でぶちのめす癖に、どの口が言っているのだろう。
少なくとも比奈子は誰も傷つけていないし、警察官の身分を隠れ蓑にした殺人を画策しているわけでもない。
過度に感情を込めて見誤るくらいなら、事件に対して「興味深い」と言いつつ、ちゃんと仕事をしてくれる刑事の方がよくはないかな。
第9話「ANSWER:THE LAST」

東海林の警護の元、ホテル住まいしていた比奈子は居場所を都夜に突き止められる。
都夜を追跡した片岡(高橋努)は、突如現れた青い瞳の女性に切りつけられて重傷を負うが、彼女こそ高校生の比奈子に「自分らしく人を殺せばいい」とナイフを渡した人物、真壁永久(まかべ とわ・芦名星)だった。
永久は東海林を廃工場に拉致・監禁の上、指示に従わない都夜をあっさり焼き殺す。
そして自分を殺せば東海林を救えると比奈子に告げ、工場に火を放った。
感想
比奈子役の波留は、下積み時代はロングヘアだったと聞いたことがある。
トレードマークのショートヘアしか見たことがなかったが、永久と対面した高校生の比奈子はロング、刑事の比奈子はショートで、2人の比奈子が並んでいる様子は波留の新旧といった感じで面白かった。
永久の青い瞳は、原作の児玉永久が父親から受け継いだ暗闇で光る眼に倣ったのだろうが、やりすぎて違和感しかなかった。
せめて真っ青なカラーコンタクトレンズではなく、もっと抑えた色味で匂わせる程度でよかったのに、なぜあんなアバターや異形めく必要があったのか謎。
母親がしてくれたように比奈子が永久を抱きしめる場面は、短かったが納得感のある結末だった。
永久の脱獄や獄中からの教唆を暗示する思わせぶりなシーンがなかったのも好感触。
全体的な感想

原作との違い<登場人物>
登場人物自体はドラマオリジナル回を除き原作とほぼ同じだが、人物設定や描写はまったく異なり、名前が微妙に変えてある人物も多い。
原作の比奈子は甘いココアが好きで、太り気味なのを気にする健やかな精神の持ち主だが、ドラマでは幼少期に父親から怪物呼ばわりされ、「自分のような人間はいつか人を殺すのではないか」と心に闇を抱えたサイコパス然とした人物として描かれている。
東海林も原作とは似ても似つかぬトンガリ具合。
イメージも全然違う関ジャニ∞(放映当時)の横山裕が演じているのを見て「あ、ドラマでは東海林が相手役なのね」と察した。
恋愛関係には発展しないが、完全に比奈子と東海林が中心になっていた。

中島医師は腫瘍発生装置が指輪か腕時計かくらいの違いで、殆ど原作の通り。演じる林遣都もトレードマークの丸眼鏡がよく似合い、驚くほど中島先生そのものだった。
厚田警部補と死神女史も原作通りだが、演じるのが渡部篤郎と原田美枝子では絵面がきれいすぎた。イメージは合っている…ように思うけど、ガンさんはハゲで女史は鶏ガラだよ?何割増しにしたらこんなお洒落な美中年になるんだ?
それからジャンポケ(放映当時)斉藤の三木もそれっぽくて自分は好きだった。
原作との違い<ストーリー展開>
初期の原作はオムニバス的に事件を追い、比奈子の刑事としての成長、厚田班の面々の深掘り、班メンバーの相互理解などを描いていたが、シリーズ中盤、児玉永久が登場した第5弾『ZERO』辺りから少しずつ雲行きが怪しくなってきた。
シリーズの魅力の1つである猟奇事件や描写は変わらずだが、中島医師が収容されている「日本精神・神経医療研究センター」、国際犯罪組織「スヴェート」など、話が一介の捜査班では手に負えないところまで膨らむ。
話のスケールに比例するように展開も急ぎ足になっていき、比奈子の台詞も作者が言わせている感が強くなっていったように思う。
あの既視感は『鋼の〇金術師』。みなが一丸となり多大な犠牲を払いながら巨悪と対峙する、走りすぎる筆、主人公の言葉に作者が自身の思いを投影させすぎている感。
ドラマでは原作の枠組みは大切にしながらも、そこまでは欲張らず、あくまで個々の猟奇事件と比奈子の内面をリンクさせて永久に繋ぐにとどめた。
最終盤が少々雑な印象は否めないが、自分が原作に抱いた不満は解消されていたと思う。
永久(とわ)の違い
他の登場人物は、略歴や人となりはドラマ仕様になってはいても、年齢や性別などはほぼ原作に倣っていたが、永久だけは違っていた。
逆に言えば「永久」という名前だけが同じ。受けていた虐待も種類が違う。
原作の児玉永久は嫌いだったし、その扱いにも違和感と不満があった。
「心が育っていない」と中島医師が預かったが、子供は親からのみ影響を受けるわけではない。小学校にも通い、書籍も好きに読める。年齢相応に小生意気な弟もいる。主催者の身内として長野へたびたび山村留学もしている。保健師の女性への好意や思慕、独占欲もある。
「心」の定義が「道徳心、良心」であれば確かに育っていないが、「感情、欲求、精神的な動静」であるなら歪んではいるが育っていると言える。
小学校中高学年にもなって幼稚なことだと苦々しく思ったが、本人以上に中島や比奈子の永久に対する態度や考え方がどうしても受け入れられなかった。
子供というだけで、酷いやり方で他者や動物をオモチャにした罪は消えないと、個人的には考えている。
おそらく一般の施設では手に負えなかっただろうが、結局は国にとって価値のある中島医師が手元に置きたがったからセンターが受け入れたに過ぎない。
もし自分の家族をあんな風にした子供が、永久のように厚遇されていたら、平常心ではいられない。特殊な出自の上、心が育っていないと第三者から言われたところで知らん。
「研究対象」の「実験動物」扱いなのであれば、まだ我慢もできようが、中島は愛情を注いでいる。それは耐えがたい。
永久に刺された比奈子が懸命にトラウマと闘い、永久を受け入れていたのも、もともと警察官になるような人物の上、愛する中島が大切にしているからという理由もあるだろう。それは比奈子の自由ではあるが、他人にまで求めてよいものではない。
児玉永久に対しては忌々しい以外の感情が持てないが、ドラマの真壁永久は、まだ理解ができる。
もちろん嫌悪感はあるし、遺族の立場なら復讐を考えるところではあるが、真壁の待遇は児玉ほどよくはないことも解るし、比奈子に抱きしめられた真壁の反応は、これからの真壁に一縷の望みを見出せるものだった。
原作でも、比奈子の抱擁が児玉にとって母親の温もりを感じさせるものだと書かれていたから、それを踏襲したのかもしれない。
唐辛子のかけすぎ

「かけすぎ」とは量のことではなく、TPOの問題。
ドラマの比奈子は、原作と同様、七味をよく飲食物に振りかけており、他人にも勧めるが、制作側がとにかく七味好きの変人をアピールしたいのか、やりすぎなのだ。というかお行儀が悪い。
原作では何でもかんでも、いついかなる時でも七味を振ることはないが、ドラマでは来客用に出された緑茶や振る舞われたスイカにまで、これ見よがしに七味を振りかけていた。
いやもう、これはマナー違反。「家でやれや」のひと言である。
実は自分も、八幡屋礒五郎の缶入り七味は原作を読んで手に入れ、常備している。あの蓋を回すシャリッとした感覚が妙に楽しい。
とはいえ使い方はごく普通。ココアやガムに振って無駄にしたくないので、試したこともない。
ちなみに原作で比奈子が厚田班へのお土産にした七味ストラップは、県外であれば八幡屋礒五郎オンラインショップで購入できる。組紐が赤、紫紺のものは終売、5色のみが販売中(2026年3月現在)。
他にもステッカーやハンカチ、ポーチなどのオリジナルグッズが販売されている。
まとめ

地上波にしてはかなり攻めたドラマだと思う。
ストレートに言ってしまうとグロはあるがエロはなし。
猟奇ものが苦手な人にはそもそも向かないが、精神的にじわじわ追い詰められる感もなく、ある意味スッキリ観られる。
原作の実写化ではなく、パラレルワールド的な物語になっていたが、ドラマオリジナルのストーリーも人物設定も違和感がなく、随所に原作を感じさせる作品に仕上がっていた。
原作ファンは意見が分かれるかもしれないが、自分は肯定派。
比奈子が外出時に「スイッチ、オン」、帰宅時に「スイッチ、オフ」と呟いて外面と内面を切り替えるシーンはけれん味が強く、ナイフを持ち歩く比奈子の心の闇(?)も「結局は中二病かい」と苦笑したけれども。
倉島の空回り具合は微笑ましかったが、それ以外は余計な恋愛要素がなかったのも好印象。刑事ものは不要物に邪魔されず楽しみたいし、いくら比奈子の対が東海林でも、あれだけ睨みつけて罵倒しておいて、後半でいきなり恋愛モードになられても困る。
第1話の宮原の死体や第8話のカラスの遺骸は素晴らしかったし(という表現が正しいかどうかはともかく)、えげつない事件の経緯が誤魔化されていないのもよかった。
観る人をかなり選ぶとは思われるが、こういう原作を中途半端にふんわり実写化されるのが嫌いな自分としては満足のいく作品だった。

