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『時計館の殺人』Huluオリジナル

映画・ドラマ日記
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「ジャンル」は鑑賞媒体によるもの、もしくは独断により分類しました。
記事内の画像はすべてイメージ画像です。実際の映像とは関係ありません。

作品情報

タイトル:時計館の殺人
監督:内片 輝 山本 大輔
脚本:戸田山 雅司 早野 円 藤井 香織 内片 輝
原作:綾辻 行人
制作:HJホールディングス 日本テレビ
公開:第1部(第1話-第6話)2026年2月27日、第2部(第7話・最終話)2026年3月20日
配信:Hulu
放送時間:全8話
ジャンル:ミステリ,サイコスリラー,クローズド・サークル,サスペンス
個人的評価:★4.0/5.0
※出演者は「登場人物」を参照

主な登場人物(読み)/出演者

※人物相関図は後に記載

主人公(クレジット順)

江南 孝明(かわみなみ たかあき)/奥 智哉
24歳。稀譚社(きたんしゃ)が発行するオカルト雑誌『CHAOS』の新米編集者。
仕事で時計館の取材班に加わる。
鹿谷(島田)とは以前の事件で知り合って以来の友人で、「こなん」と呼ばれている。

鹿谷 門実(ししや かどみ)/青木 崇高
40歳。本名は島田 潔(しまだ きよし)。駆け出しの推理作家。九州にある寺の三男。
江南に誘われた時計館行きを仕事の都合で断ったが、取材開始後に時計館を訪れ、紗世子の依頼を受ける。

稀譚社 関係者

小早川 茂郎(こばやかわ しげお)/山中 崇
44歳。江南の上司。『CHAOS』の副編集長。今回の特別企画の発案者。
W**大学のOBで、企画の協力依頼としてミステリー研究会に声をかけた。

内海 篤志(うつみ あつし)/今野 浩喜
29歳。稀譚社写真部のカメラマン。実は結構な怖がり。

光明寺 美琴(こうみょうじ みこと)/向里 祐香(こうり ゆうか)
32歳。売り出し中の霊能者。
鹿谷門実の住むマンションの隣人。

W**大学ミステリー研究会(クレジット順)

福西 涼太(ふくにし りょうた)/鈴木 福
21歳。3年生。
高校生の頃、両親が離婚して母親に引き取られた。親戚の不幸で取材に参加できなくなったが、後に訪れた時計館で鹿谷と出会う。

瓜生 民佐男(うりゅう みさお)/岡部 ひろき
20歳。3年生。超常現象研究会(ミステリー研究会)会長。
頭の回転が速く物怖じしない性格。
早希子、河原崎、福西とはW**大学附属中学の受験時からの幼なじみ。

樫 早希子(かたぎ さきこ)/吉田 伶香
20歳。3年生。

河原崎 潤一(かわらざき じゅんいち)/渡辺 優哉
21歳。3年生。

新見 こずえ(にいみ こずえ)/阿部 凜
19歳。2年生。
福西の代役として、企画の前日に参加が決まった。

渡辺 涼介(わたなべ りょうすけ)/藤本 洸大
20歳。2年生。

時計館 関係者

古峨 倫典(こが みちのり)/伊武 雅刀
故人。9年前に死亡。時計館の先代当主。
大手時計メーカー・古峨精計社の前会長。

古峨 永遠(こが とわ)/真木 ことか
故人。10年前の8月に死亡。
時計館に現れる霊は彼女の霊であるとされている。

古峨 由季弥(こが ゆきや)/志水 透哉
16歳。時計館の現当主。
倫典の従弟の息子だが、両親が亡くなり倫典の養子となった。
少女と見紛うほど美しい容姿だが、正気を失っているらしい。
姉・永遠を異常なほど慕い、生きていると信じている様子。

伊波 紗世子(いなみ さよこ)/神野 三鈴(かんの みすず)
46歳。時計館の管理責任者。
夫・裕作(故人)とともに倫典が鎌倉に移り住む前から仕えていた。

その他

馬淵 長平(まぶち ちょうへい)/角野 卓造
70歳。倫典の親友。
息子の智(故人)は倫典の娘・永遠の許嫁だった。
現在は認知症が進み、鎌倉市内の老人ホームに入居している。

野之宮 泰斉(ののみや やすひと)/六平 直政
84歳。倫典の父の代から懇意にしている占い師で、倫典の妻子の死期を言い当てた。
時計館の新館に住んでおり、現在は認知機能が著しく低下している。
取材班に破滅の相を見たとして、すぐ出ていくよう警告する。

中村 青司(なかむら せいじ)/仲村 トオル
故人。天才建築家。時計館の旧館を設計した。
彼が手がけた館には、隠し部屋や隠し通路など、必ずなんらかの仕掛けがあるとされる。

人物相関図

綾辻行人『時計館の殺人』(講談社文庫)およびHuluオリジナル『時計館の殺人』を基に作成

時計館の平面図

綾辻行人『時計館の殺人』(講談社文庫)およびHuluオリジナル『時計館の殺人』を基に作成

時計館の全体配置図

綾辻行人『時計館の殺人』(講談社文庫)およびHuluオリジナル『時計館の殺人』を基に作成

あらすじ

第1話

十角館の殺人事件から3年、K大学の学生だった江南は大学院を修了して出版社に就職。
一方、島田は推理作家「鹿谷門実」として活動を始めており、2人は久しぶりに顔を合わせる。

新米編集者である江南は、自身が担当するオカルト雑誌の『鎌倉・時計屋敷の亡霊に挑む』という特別企画のため、副編集長・カメラマン・W**大学の学生5名とともに「時計館」と呼ばれる屋敷を訪れることになったという。
そこは十角館と同じく中村青司が設計した建物らしい。

江南ら取材班は、美人霊能者・光明寺を霊媒役に本格的な交霊会を開き、屋敷の亡霊と交信を試みるため、時計館の旧館に3日間、閉じこもる。

第2話

江南から時計館の話を聞いた鹿谷は、いったんは同行を断ったものの好奇心に勝てず鎌倉に向かう。遅れてやってきたW**大の学生・福西と途中で出会い、2人で時計館を訪問する。

江南らは旧館内で交霊会を行うが、その夜、光明寺が姿を消す。
光明寺が持っていた新館へ続く扉の鍵も見当たらず、取材班は外部との接触を断たれ旧館に閉じ込められた。

第3話

倫典が遺した「沈黙の女神」の詩の意味を探るよう、紗世子に依頼された鹿谷は、福西とともに館内を案内される。
時計塔の最上階にある書斎に通された2人は、この家で起きた不幸なできごとを知る。
若くして亡くなった母と同じ16歳で花嫁になることを夢見た病弱な永遠、永遠の死期を野之宮に予言され時計館〈旧館〉を建てた倫典、そして永遠の死後、不幸が重なり、永遠も含め計8人の関係者が死亡していた。

一方、旧館では仮面を着けた何者かによって取材班が襲われ、2名が殺害される。

第4話

鹿谷と福西は「沈黙の女神」の詩の謎の手がかりを求め、倫典の親友・馬淵を訪ねるがまともな話は聞けなかった。
2人は時計館に戻り、さらに時計塔や裏庭に建つ納骨堂などを詳しく見て回る。

旧館では犠牲者が増え、メンバーは「この中に犯人がいるのではないか」と疑心暗鬼に陥っていた。

第5話

江南らは犯人らしき人影を見たが、存在はつかめない。
意識が朦朧とする中、江南は取材用に記していたメモを頼りに経緯を見直し始める。
河原崎は「10年前の夏に起こったできごと」について思い出そうとしていた。

鹿谷と福西は「中村青司が設計したからには何らかの仕掛けがある筈」と糸口を探し続けていた。

第6話

生き残ったメンバーとともに事態に向き合う中で、江南も「中村青司が設計した建物であれば仕掛けが施されている」可能性に思い至り、必死に手がかりを探していた。

鹿谷とともに時計館に宿泊していた福西も、曖昧だった記憶を頼りに「10年前のできごと」について答えを見つけようとしていた。

☆第7話
鹿谷は使用人の田所(矢島健一)に異変を知らされ、緊急事態が起きていると判断。旧館に足を踏み入れると惨殺された2体の遺体、血を流して倒れている江南を発見。
同時に福西も危機的状況に陥る。
数日後、鹿谷は刑事の次兄・島田修(池田鉄洋)から情報を入手し、情報を整理し始めた。

最終話

惨劇が起きた数日後、回復した江南は鹿谷の住まいを訪れ、江南のメモから鹿谷が作成した時系列表を眺めた。

あず
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旧館で見つかった2名の遺体以外は、3名は納骨堂、4名は森に埋められており、取材班8名に野之宮を加えた計9名が殺害された。
犯人は由季弥。姉・永遠の復讐を完遂して自殺したという結論になりかかっていた。
旧館内の108個の時計がすべて壊されていたのも、永遠を苦しめた時計というものを由季弥が憎んでいたからだと考えられた。

翌8月5日、鹿谷と江南は時計館を訪れ、紗世子を問い詰める。
10年前には永遠と紗世子の娘・今日子が亡くなっており、紗世子は2人の死因について鹿谷に嘘を教えていた。

まず永遠に早く16歳の誕生日を迎えさせるために、倫典は旧館に永遠を閉じ込め、時間の流れを人為的に早めた。
だが10年前、永遠が久々に外に出ていた時に瓜生、早希子、河原崎、福西と出会い、本来の正しい時間を知ったことで永遠は絶望して自殺した。

その後、瓜生と福西が掘った穴に落ちた今日子が破傷風にかかり死亡。
落とし穴を掘ったのが2人とは知らない紗世子は、昨年の秋にW**大学ミステリー研究会が取材を申し込んだ時に4人の名前を見つけ、復讐を決意した。

紗世子は光明寺と協力して学生たちを時計館に誘い出し、口封じと疑いの目を向けるため光明寺を殺害。
光明寺の本名は寺井光江。永遠つきの看護師で、永遠の死後、責任を感じて自殺した寺井明江の妹だった。

江南らが取材中の旧館では、旧館の仕掛けを利用した紗世子の細工により外界とは異なる時間が流れており、そのお陰で紗世子はアリバイを確保。
睡眠薬や盗聴器を駆使し、さらに中村青司が施した秘密の通路や隠し扉を使い、旧館と外界を行き来、旧館の各部屋も自由に出入りして殺人を行っていた。

福西が時計塔から転落したのも紗世子の仕業で、意識が回復した福西は鹿谷にその事実と10年前の2人の少女の死に関する本来の日付について話していた。
由季弥を犯人に仕立て上げて殺したのは、由季弥が穴に落ちた今日子に気づきながらも死んだ姉のために放置したからだった。

「沈黙の女神」の詩の謎を解いた鹿谷は、時計塔から出るよう江南と紗世子を促すが、紗世子は落下した塔時計の針に貫かれ死亡。
9年間、沈黙を守ってきた女神、すなわち鳴ったことのない3つの鐘は、時計塔が倒壊することで「ただ一度の歌声」を響かせた。
時計塔は「我らの墓標」である納骨堂に向けて崩落し、終焉を迎えたのだった。

感想

キャストについて

今回のキャストの中にも、原作とは異なるタイプの俳優が起用されていたが、まったく違和感のない人選だったと思う。

例えば原作ではでっぷり太っている副編集長・小早川は、シュッとした山中崇が演じていたが、演技力も相まってむしろ山中崇の方がしっくりきた。
同じく原作では、おそらくトリックに説得力を持たせるため長身で短髪の紗世子よりも、まとめ髪の神野三鈴の方がより紗世子らしい気がする。

池田鉄洋の出番がほんの少しだったのは残念だが、元々島田修はシリーズを通してそこまで絡まない登場人物なので仕方がない。
代わりといってはなんだが、使用人役の矢島健一や、喫茶店のマスター役の嶋田久作など好きな実力派が脇を固めているのは嬉しかった。

昭和臭は封印?

今回は取材班のメンバーはお揃いの“霊衣” に着替えさせられたため、私服姿は一瞬だったが、前作『十角館の殺人』のような昭和臭さはあまりなかった。
鹿谷のジャケットのチェック柄や、こずえの髪型と服装くらいしか昭和っぽさはなかったかも。
前作ではいかにも昭和だった江南の髪型も、今風のストレートになり、いい感じだった。

ちなみに原作の霊衣は「真っ黒な、わりあいに厚手の木綿地で作られ」ているが、ドラマでは赤いベルベット生地に変わっており、暗めの場所ではとても映えていた。
フードに黒い裏地がついていたりと作りもよさそうだったが、少々生地が薄く、明るい場所ではテカテカして縫い目の折り返しが目立っていたのが惜しい。もう少し光沢を抑えた厚手の生地の方が雰囲気も出たんじゃないかな。

第2弾が『時計館』だった理由

原作では『十角館』の次は『水車館』なので、何となくドラマもそうなるかと思っていたら、まさかのシリーズ5作目の『時計館』。
一瞬、動揺したが、実写化は鹿谷と江南の2人ありきのようなので、鹿谷単体で遭遇した『水車館』『迷路館』『人形館』の3作が外されるのは当然と言えば当然だった。

原作に忠実な実写化が売りなので、上記3作で江南を出すわけにもいかないのだろうが、個人的には鹿谷だけの作品があってもいいと思うし、完結した原作9作品のうち1/3が候補から外れるのも勿体ない気がする。
『暗黒館』の原作文庫は4巻もあるので、実写化されるのか怪しいし。

『時計館』に続く実写化第3弾は2026年に製作が決定していると公式に発表されており、まだ作品名は明かされていないが、この流れでいくと『黒猫館』ではないかと予想している。

トリックは完璧だが…

実は原作の『時計館』は、あまり好きではない。
最大の理由としては、トリック自体は斬新で理論上は完璧だが、果たして実現可能なのだろうかと、机上の空論臭が払拭できない点にある。

ミステリは「トリックが破綻せず理論的に機能していれば他はよい」とする向きもあるようだが、個人的にはあまり納得していない。
殺人事件は直接手を下さずとも必ず人間が起こすものであり、そこには露見しないための知力と実行するだけの体力の両方が必要となる。

あず
あず

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ただでさえ大きな建物の管理と住人の世話があるというのに、広い敷地を行き来した上に相当に体力のいる、しかも反撃される可能性も高い撲殺を何件もこなすほど46歳ってタフじゃないと思うんだけどね?

さらに森まで遺体を運び、埋めるという作業は言うほど楽ではない。あらかじめ穴を掘るにしても重機を使うわけにもいくまいし、4人分となるとかなり大変だったと思われる。
隠蔽工作の作業もなかなかにハードだし、これらを日数限定の火事場の馬鹿力と片づけるのは無理がある。

通常業務をこなしながら、それだけのことを密かに進め、しかも周囲に気取られないよう涼しい顔をしている精神的な重圧も想像を絶する。
罪なき人間、対象ではない人間まで手にかけたことに対する慙愧の念に苛まれたりはしなかったのだろうか。

そう考えると、計画やトリックといった知力は十分だが、実現させる心身の体力には大いに疑問が残り、完遂は不可能としか思えない。
「これ無理じゃね?」と感じた時点で、物語としてはあまり面白いとは思えなくなった。

気持ち悪い年齢差

『時計館』が好きではないもう1つの理由として、倫典と妻の時代の年齢差が開きすぎていることが挙げられる。
初めて読んだのが多感な学生時代だったこともあり、26歳も離れていることに非常な嫌悪感を抱いた。

16歳になるのを待って結婚したとあるから、出会いと恋愛は時代が15歳以前ということになる。親の借金のかたに、とかいう事情なら、それはそれで胸糞悪いが解らなくもない。だがいい歳のオッサンと中学生が真剣恋愛?「ふたまわり以上の年齢差を忘れて愛し合い」じゃないのよ。〇リコンかよ。

多分この嫌悪感の殆どは、片方が未成年であることに起因している。80歳と54歳、60歳と34歳であれば、驚きはするが嫌悪感まではない。
26歳という父娘を連想させる生々しい年齢差も、さらに不快感を高めている。

小説の構成上、そこまで不自然な年齢差を持たせる必要があるのかと思ったが、野之宮はともかく倫典の親友である馬淵は、年齢を変更しなければならなくなるか。認知症である必要もあるし、永遠の事情もあるし、必要性は…あったねぇ。
いやでも42歳の花婿と16歳の花嫁ってやっぱり気持ち悪いわ。
写真の花婿が、やたらいい顔で笑う伊武雅刀なのがまた不気味(伊武雅刀は好き)。

他にも古峨家は、金に物を言わせた一般人には到底受け入れられない価値観をお持ちで、使用人も含めぶっ飛んでいる。関わり合いにはなりたくない。

のりまき
のりまき

年齢差についてはあくまで個人的な感覚で、現実の他人様の歳の差婚について物申すのとは次元が違うので…

あず
あず

そういや45歳差の芸能人カップルに対しては、歳の差どうこうより強烈なバッシングの方が嫌だって言ってたね

体内時計は大丈夫?

あず
あず

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江南ら取材班も、睡眠薬の影響と無自覚の急激な時差に体調を崩したと思われるが、それでも数日間のこと。生きていれば小早川と光明寺以外は20代だし回復も早かっただろう。

だが永遠はどうだったのだろう。
完全に昼夜逆転の生活ならまだしも、少しずつ時間を早めるというのは人体にどんな影響が出るものなのか。
しかもほぼ日光に当たらない生活は、ビタミンDが不足して骨が脆くなりやすいほか、セロトニンの分泌が減って精神的に不安定になり、不眠やうつ状態を招く。

永遠のエキセントリックさは、病気以外には子供のうちに外界と隔離されたせいもあるだろうが、異常な住環境のせいで、鋏で胸を突くまでに加速したのではないだろうか。

それに時計だらけで本もなくテレビも観られず、おまけに半地下。
あんな辛気臭い場所で暮らせば誰でもおかしくなりそうだし、実はかなり酷い状況だったのではと思われる。

永遠に付き添っていた倫典も63歳で病死。1980年の日本人男性の平均寿命は73.35歳なので、早死にと言って差し支えない。彼の死も旧館での生活のせいで早まったのではないか。
永遠の死に責任を感じた看護婦の明江が縊死したのも、元々軽いうつ状態にあったところに倫典の叱責が加わり、引き金となった可能性もなくはない。

「108」の意味

旧館に置かれたイミテーションの時計は108個。
作中では多くの日本人がまず想起するように「煩悩の数」と言及されていた。

他に意味はないかと調べてみたら、インド哲学やヨガでも宇宙の真理を表す神聖な数として重んじられ、瞑想の回数などにも用いられているらしい。
1が「個人」、0が「宇宙や神羅万象」、8が「永遠」を表しており、縁起のよい数字とされている。

また「108」を「とわ」と読む語呂合わせから、恋愛においては「永遠の愛」という意味を持ち、108本の薔薇の花言葉は「求婚」であることからプロポーズの花束の定番となっている。
スピリチュアルな世界では「煩悩の浄化」「宇宙との調和」「努力の成就」などを意味するらしい。よく知らないがエンジェルナンバーなるものの中でも108は「煩悩を超えた先の豊かさ」を意味しており、スピリチュアルな成長を通じて物質面も充実するという意味を持つのだそう。

あず
あず

エンジェルナンバーとは、アメリカのスピリチュアルカウンセラーであるドリーン・バーチュー博士が体系化したもので、数秘術(世界最古の占術のひとつ)をベースに天使からのメッセージとして数字の意味を読み解く方法として広まった、そうです

倫典が108個の時計を用意した理由は不明だが、「煩悩から解き放たれたい」などという願いを込めたというよりかは「108」を「とわ」と読む語呂合わせを採用した作者の遊び心のように思える。

倫典の真意

あず
あず

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結果的に両人とも時計塔に関係なく命を奪われたが、時計塔に住んでいた野之宮と由季弥は塔が崩落する際に巻き込まれて亡くなる可能性が高かった。
これは倫典の復讐か。私はそうは思わない。

倫典の遺言および紗世子に残した遵守事項の中で、由季弥と野之宮を「この家に」住むように言っている。「時計塔」とは指定していない。
復讐であるなら、そんな不確定な要素は排除するだろう。

原作のエピローグで鹿谷が語ったように、屋敷に倫典・時代・永遠の「生きた魂」を留め、「“本当の死”を迎える」時、「自分たちを送る弔鐘を打ち鳴らそう」という解釈が最も近いのではないか。
復讐にそこまでの手間とお金をかけるか否かはさておき、少なくとも憎い相手を殺すのに美しい七色の仕掛けは施さない。

倫典はおそらく、時計塔が終焉を迎える時までは生きるつもりで、言い換えれば永遠の28歳の誕生日に時計塔とともに潰えるつもりで、最上階に書斎を作らせたのではないだろうか。
「沈黙の女神」とは鳴らない鐘であるとともに、倫典の愛であり狂気であり、娘に与えた苦しみの罪でもあったと考える。
「罪深き獣たちの骸」とは、本来は倫典自身も含めた時計屋敷の秘密を共有する者もしくは秘密そのものを指し、女神と最も近く最も生存率が低い場所で、時が来たら自身を捧げるつもりだったのかもしれない。

だがそれよりも早い死期を悟り、倫典の身体(遺骨)は納骨堂に、倫典の罪と時計屋敷の秘密は時計塔に分かれることとなったことから、あのような詩めいた遺言を残したのだろう。
おそらく秘密の共有者や、永遠に真実を教えてしまった子供たちを殺す意図はなかったが、逆に守るつもりもなかったのは、何人も時計塔に立ち入らぬよう言い残していないことから解る。
倫典にとって本当に大切で、存在が目に入っていたのは時代と永遠だけだったのだろう。

また原作では旧館と納骨堂の入口に同じ砂時計のレリーフが施されている点、及び種々の描写から、「時代と同じ28歳まで永遠には生きてもらう(そして死んでもらう)」という倫典の意思を読みとることができる。
旧館では無理だったから納骨堂に場所を変えて、倫典が設定した28歳の誕生日までは是が非でも生きている設定にしたかったのではなかろうか。
もしかしたら倫典にとって永遠は、愛しぬいた時代の忘れ形見という名の代替にすぎなかったのではないか。永遠に「生きてほしい」のではなく、「時代と同じ16歳で結婚、28歳で死去させる」ことに固執していたのかもしれない。

まとめ

第1弾『十角館の殺人』に続き、本作も随所にこだわりが見られる素晴しい出来となっていた。
視聴者に親切な仕様も健在で、登場人物に簡単な紹介とフリガナつき氏名が示されるのは、特に誰が誰だか分かりにくい学生たちを区別するのに助かった。
前作と同様、適宜表示される平面図も気が利いており、図自体もレトロで雰囲気づくりにも一役を担っていた。

第1話のオープニングは急かすような秒針の音から始まり、もうそこから期待感はMAX。物語の世界に引き込まれる。
冒頭に現れる六角形のモザイクタイル及び旧館を思わせる煉瓦造りの噴水?はお洒落な演出かつ原作にはない大胆な伏線となっており、ニヤリとさせられた。
実際に時計の細かなタイルが波紋のように波打つさまは、鳥肌が立つほどの衝撃だった。

物語を進めていく過程においても神経が行き届いていた。
仮面が紛失した跡にはフックが壁に残っている等、視覚的に分かりやすい工夫がされている。
原作では霊衣の入った箱が部屋の隅に積み上げられていたのに対し、紗世子が光明寺の前に恭しく運んできたり、実写化ならではの細かな配慮が美しい。
「大事なことなので2回言いました」的に、野之宮に「家が崩れるぞ」と取材班にも鹿谷たちにも警告させて、視聴者に念を押してくれるのも心憎い。

目玉というべき時計塔を含む屋敷は、実情を知る目には晴天下では僅かに作り物めいて見えたが、影が射したり薄闇や荒天の中では抜群の存在感を放っていた。
特に原作では「小さな石造りの建物」と称されるのみだった納骨堂の外観が素晴らしかった。扉の左右に2つの塔を持つ佇まいは教会を彷彿とさせ、死者の家として相応しい。納骨堂は扉に砂時計のレリーフだが、教会も正面に時計が嵌め込まれているものが多い。

この事件において、被害者以外で最も気の毒なのは、頭のネジが飛んだ兄と使用人のせいで、時計塔の残骸といわくつきになった屋敷の後始末を押しつけられた、倫典の妹と言える。
海外在住&アラカンなのにと、作中では名前しか出ていない彼女にはいたく同情した。

それから堅物とまではいかずとも真面目そうな江南が、鼻の下をのばして光明寺の香りを嗅いでいるのにはかなり引いた。
そりゃ重要なファクターの1つではあるけれども、いつまでも見ず知らずの女性の背後に立って郵便物を盗み見しながらスンスンしてたら、ねぇ。下手すりゃ通報されるよ?
でも次回作でも変態(!)江南が見られるかもと期待している自分もいる。

のりまき
のりまき

ちなみに実写版の時計塔は、文庫の新装改訂版の表紙の方でした💛

あず
あず

三角屋根がついてる方だね!古い文庫の表紙の時計塔は直方体の塔なんだね

のりまき
のりまき

広間に置かれた、時計を模したテーブルも素敵だったなぁ💛