個人的な映画・ドラマ日記です。
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作品情報
タイトル:プロメテウス(吹替版)
監督:リドリー・スコット
脚本:デイモン・リンデロフ/ジョン・スペイツ
公開:2012年8月24日(日本)
配給:20世紀フォックス
上映時間:124分
ジャンル:パニックSFホラー,サスペンス
評価:★★★☆☆
※出演者は「登場人物」を参照
登場人物(出演者)
あらすじ
見渡す限りの大自然の中、滝のそばで青白い肌の人型の異星人が蠢く黒い液体を飲むと、身体はすぐに変貌し、無数の虫のような生命体が飛び立つ。崩れながら滝壺に落ちた身体は溶け、DNAを惑星に拡散させた。
場面は変わり西暦2089年、スコットランドのスカイ島で考古学者のショウとホロウェイは新たに壁画を発見した。
複数の古代文明で見つかった、巨人が古代人に向けて示す星図の壁画の共通点から、彼らは人類の起源が宇宙にあると推測。
ウェイランド社により調査チームが組まれ、宇宙探査船プロメテウス号は星図の示す恒星系を目指して出発した。
2093年12月、目的地LV-223が迫り、乗務員はコールドスリープから目ざめる。
プロメテウス号は無事に着陸。ショウらはすぐさま岩山のような遺跡に向かった。
遺跡内では、デヴィッドが映像記録装置を発見。再生されたホログラム映像には「エンジニア」が映し出され、その先に扉で首を切断された本物の死体が倒れていた。
扉の先には大空間が広がり、壁面には細長い頭を持つ人型のレリーフ。床には巨大な頭像と、無数の円筒形の容器が置かれていた。さらにミミズのような小生物が棲息していた。
嵐が近づく中、調査隊は撤収を余儀なくされ、ショウは切断された「エンジニア」の首を、別行動をとっていたデヴィッドは秘密裏に円筒形の容器を持ち出した。
プロメテウス号で首を測定したところ、DNA型は人類と一致。
一方、デヴィッドは容器を開いて黒い物体を取り出し、酒に混入させてホロウェイに飲ませた。何も知らないホロウェイは、部屋に戻りショウと関係を結ぶ。
その頃、遺跡内では道に迷って取り残された、地質学者ファイフィールドと生物学者ミルバーンが、まだ迷っていた。
彼らが円筒形の容器が置かれた広間にたどり着くと、ミミズのような小生物「ハンマーピート」が現れ、乳白色のコブラのような軟体生物に変異。
ミルバーンは口腔から体内に侵入され殺害され、ファイフィールドは軟体生物の体液が彼のヘルメットを融解させ、悶絶しながら倒れ込んだ。
あらすじ続き
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嵐が去り、再び調査隊は遺跡に向かい、ミルバーンの死体を発見。
またも別行動をとったデヴィッドは、「エンジニア」の宇宙船の操縦室を見つけ、ホログラム映像から操縦方法を学習するとともに、「エンジニア」が仮死状態で生存していることも知る。
捜索中にホロウェイの体調が悪化。プロメテウス号に連れ帰るも、船内感染を怖れるヴィッカーズが火炎放射器を向けてホロウェイの乗船を拒む。
ホロウェイは助かる見込みがないことを悟り、自らヴィッカーズの前に進み出て焼死する。
ショックのあまり気を失ったショウが目ざめると、付き添っていたデヴィッドから妊娠を告げられる。
先天的な不妊症にも関わらず、さらに10時間前のホロウェイとの性交により妊娠3ヶ月の状態と知り、ショウは人外の生命体が体内で急速に成長していると確信。彼女をそのまま長期睡眠させ、地球に戻そうとするクルーから逃れ、ヴィッカーズの居室兼専用の帰還モジュール内にある、全自動手術装置で摘出処置を受ける。
体内から取り出された体「トリロバイト」はまだ生きており、ショウはそれを装置内に閉じ込めて逃げ出した。
一方、寄生されたファイフィールドがプロメテウス号に帰還。その場にいた乗組員を殺戮したが、駆けつけたヤネックらにより倒された。
その間ショウは、故人だとばかり思っていたウェイランドが、密かにプロメテウス号に乗船していたことを知る。
ウェイランドの真の目的は、人類の創造主「エンジニア」に会い、自分を死から救ってもらうことであり、デヴィッドやウェイランドの娘であるヴィッカーズもそれを承知していた。
「エンジニア」の宇宙船の操縦室に向かったウェイランド一行。
デヴィッドは「エンジニア」を目ざめさせ、ウェイランドの希望を伝えるが、話の途中で「エンジニア」は突然デヴィッドの首を引きちぎり、ウェイランドらも次々に殺害。さらに操縦室に乗り込み離陸の準備を始めた。
ヤネックの推測によれば、惑星LV-223は「エンジニア」の母星ではなく、生物兵器を開発・生産するための拠点で、ここにいた「エンジニア」は自分たちが創り出した兵器により全滅。
唯一生き残った「エンジニア」は、生物兵器を地球に拡散させるつもりだった。
ショウから何としても宇宙船を飛び立たせないよう聞かされたヤネックは、副操縦士2人とともにプロメテウス号を「エンジニア」の宇宙船に激突させた。
ヤネックは退避を選んだヴィッカーズのために、激突前にモジュールをプロメテウス号から射出。ヴィッカーズは脱出ポッドで脱出したが、墜落した宇宙船の下敷きになり死亡した。
下敷きにならずに済んだショウがモジュール内に入ると、摘出した「トリロバイト」が巨大に成長しているのを発見する。
そこへ墜落から生き延びた「エンジニア」がやってきてショウに襲いかかるが、絶妙のタイミングで彼女は手術室の扉を開け、「トリロバイト」が「エンジニア」を襲っている内に逃げ出した。
「トリロバイト」は「エンジニア」の頭部に絡みつき、「エンジニア」は倒れた。
ショウはまだ機能しているデヴィッドを回収に行き、地球に向けて「決してLV-223を探さないように」と警告を発し、別のドームに残されていた宇宙船に乗り込むと「エンジニア」の母星を目指して旅立った。
その頃、残されたモジュール内に倒れて動かない「エンジニア」の胸部を突き破り、新たな生命体「ディーコン」が誕生。
産声を上げる口の中からは、特徴的なもう1つの口が飛び出していた。
感想
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吹替版
Amazonのカスタマーレビューは、字幕版は3.9、吹替版は3.75(2024年1月現在)。
吹替版の批判点は、登場人物の魅力のなさや脚本の回りくどさなどの他に、吹替え声優についての言及が目立った。
私は前知識なしに吹替版で鑑賞したが、ヒロイン、エリザベス・ショウの担当は剛力彩芽さん。なるほど…。
2012年の公開当時、彼女は20歳前後の上、明るく可愛らしい声なので、実力以前に少々無理があったのは否めない。
ショウを演じた女優ノオミ・ラパスは、公開当時は30代前半だが、作中では狆を思わせる童顔で、個人的にはミスキャストというほどではないが、ショウに関しては声優も俳優も幼すぎる印象が強かった(Wikipediaの写真では同一人物とは思えない年相応の方だった)。
デヴィッド
配役といえば、デヴィッドにも少々違和感が。
俳優自身は『アラビアのロレンス』風の髪型がよく似合うイケメンなのだが、なめらかな動きや顔のシワなど、人間らしすぎてアンドロイドに見えない。序盤のプロメテウス号のお留守番と、終盤の「首をもがれても機能している」という点以外は、特にアンドロイドでもなくてもよいのでは?
技術の進歩で、より人間に近づいたのかと、視聴者である私が自分で言い訳する程度にはアンドロイドらしくはない。
デヴィッドというキャラクター自体も、正直よく解らなかった。
映画を観たりバスケットボールをしたり、人間らしさを身につけたアンドロイドという印象を演出したいのかとは思ったが、細かい部分までは掘り下げていない。
ホロウェイに明らかに怪しいと分かる物体を飲ませる理由も必然性も葛藤も描かれておらず、「罪悪感も含め感情が欠落したアンドロイド」で済ませるには雑なプロットになっていた。
生みの親であるウェイランドに忠実なのであろうことは察せられるが、ウェイランドも序盤と終盤にちょこっと出てきてあっさり殺され、デヴィッドに与えた影響や命令についても分からないままだ。
そもそも「ロボット三原則はどうした」と言いたくなる独自性・独立性を持つに至るまでの過程が丸ごと省略されているし、最初からそのような性質のアンドロイドだったとしたら、作る意図が解らない。
それでも恋人はもとより、間接的に自分も嵌められたと知ったショウとの間に、ひと波乱あるのかと期待して観ていたが、何も起こらなかった。
見た目は素晴らしくイケメンだが、エンジニアとの意思疎通や宇宙船の操縦といった、ストーリー上の都合で登場し、現場を徒に引っかきまわしただけの、不可解で不愉快なキャラだった。
その他の登場人物
本作は大方の主要登場人物に魅力が感じられない。
キャラ設定はそれなりだと思うのだが、作中で生かし切れておらず、万事が中途半端な印象を受ける。
クールビューティ担当のヴィッカーズは、プロメテウス号から出ず、船内の事件もショウの妊娠程度なため、見せ場がない。ホロウェイを焼き殺す場面がクライマックスで、ほとんど活躍せずにサクッと死ぬ。
見下している筈のヤネックと一夜をともにするという、彼女の意外な一面を描くシーンも、あっさりした会話だけで終わる。
せっかくぴったりの俳優なのに、ショウの当て馬にすらなっていないのは残念だった。
ファイフィールドはモヒカンの地質学者という変わり種だが、ただ粗野なだけで設定が生きていない。
ウェイランド社に選ばれて調査チームに加わったからには、それなりに優秀だと思うのだが、その片鱗すら見受けられない。
言葉遣いは悪いわ、遺跡内で喫煙するわ、エンジニアの死体に怖じ気づいて勝手に帰ろうとするわ、B級臭が漂っていた。
ミルバーンにしても生物学者のくせに、どんな危険生物か分からないハンマーピートに対して、まるで友人宅の初対面の飼い犬に対するかのような態度をとる。威嚇されれば蛇でも犬でも危ないというのに、逃げようともせず手をかざし続ける。
様子を見ていて逃げる隙もなく襲われたという体なら分かるが、腰も引けていないミルバーンのシーンは長すぎて不自然に感じた。
現在では、特集番組などでリアルに宇宙飛行士の素顔を垣間見ることもあり、宇宙に出るに相応しい人物像が、ある程度は一般人にも浸透している。
その観点からも、ファイフィールドに限らず『プロメテウス』のキャラは程度が低すぎた。莫大な予算をかけて宇宙の果てまで調査しに来ている人間らしい知性も危機感もない。
「いや、低予算のパニック映画じゃないんだから」とげんなりしながら観ていた。
例外だったのは船長のヤネック。
ヤネック役の俳優は身長189cmのイケオジ。2018年には米娯楽誌『ピープル』の「最もセクシーな男性」に選ばれているが、セクシーというよりは笑顔が親しみやすく、ヤネックのキャラクターとぴったりだった。
いかにも包容力があり、船長らしい判断力も責任感も持ち合わせている。
LV-223や遺跡に対する重要な考察もヤネックが示していた。
アコーディオンは意味不明だが、ヤネックと、あまり出番はなかったが副操縦士2人は、登場人物として破綻なくきちんと機能していたと思う。
映像は素晴らしい
ストーリーや人物描写は雑さが目立つが、映像は素晴らしかった。
とても10年以上前の映画とは思えず(2024年1月現在)、今でも十分に鑑賞に堪えうる。素人ながら「映像技術はこの時代で頭打ちになったのではないか」とすら思った。
中盤のハイライト、ショウが全自動手術装置でトリロバイトを摘出するシーンも、非常によかった。
汗だくになりながら自ら注射を打つショウにハラハラしつつも、メスが入る前に茶色の消毒液らしきものが塗られた時は「あ、ちゃんと消毒はするのね」とちょっとほっこり。
ビチビチ出てきた活きのいいトリロバイトの動きや、表皮の質感も素敵に気持ち悪かったし(褒め言葉)、ショウのお腹が医療用ホチキスで留められていく場面も芸が細かい。
より緊迫性を演出したかったのか、ウェイランドが乗船していることを示唆したかったのかは不明だが、手術装置が男性専用なのには笑ってしまった。最先端装置なんだから、そこは両用でいいでしょうよ。笑
最終盤の、巨大化したトリロバイトが大きく触手を広げた真ん中の、牙を剥きだした内部のアップには大興奮。これですよ!これこれ!
欲を言えばトリロバイトとエンジニアの絡みはもう少し見たかったし、全体的に寄生要素が弱めだったのは残念だった。
プロメテウス
プロメテウスはギリシア・ローマ神話に登場する巨神族の1人。弟のエピメテウスとともに人間を創り出したとされている。
人間的な血筋で言えば、ゼウスの従兄弟にあたる。
ゼウスの意に反して人間に天上の火を与え、その罰として山の岩に繋がれ、未来永劫ハゲタカに肝臓を食われ続けるという責め苦を受ける。
火を与えたのは、多くの動物を創り、それぞれに翼や蹄などの贈り物を授け尽くしてしまい、最後に創った人間に与えるものが何もなかったという説が1つ。
もう1つは自分たちが創り出した人間に、深い愛情を抱いたためという説がある。
私としては後者がより相応しいように思う。
「人類の創造主」としての存在という意味であれば、エンジニアはプロメテウスと同じなのかもしれないが、内にある心情や事情はまったく異なる。
映画に取り入れたにしては設定が甘いと思った。
それもその筈、2009年5月に20世紀フォックスが発表したプロジェクトは「リブート」(再起動の意)であり、「プロメテウス」ではなかった。
公開予定は2011年12月だったが、2010年9月に予算削減要請に基づき、ジョン・スペイツによる脚本に、デイモン・リンデロフが改訂を加えた。リンデロフはテレビドラマの脚本家・プロデューサーである。
大幅な予算削減、当初とは異なる脚本を経て、製作会社重役の提案により映画のタイトルは『プロメテウス』と決まったようだ。
LV-223
旧約聖書レビ記22章3節「彼らに言いなさい、『あなたがたの代々の子孫のうち、だれでも、イスラエルの人々が主にささげる聖なる物に、汚れた身をもって近づく者があれば、その人はわたしの前から断たれるであろう。わたしは主である』」を示しているようだ。
祭司が汚れたままで、主に捧げられた聖なるものに近づいてはならないということらしい。
「ディーコン」は人名にも使われるが(クイーンのベーシスト「ジョン・ディーコン」など)、キリスト教会における役職の1つ、またその役職を担う人を指す。
プロテスタントでは「執事」、カトリック教会では「助祭」(司祭に次ぐ聖職位)、正教会では「輔祭」と称される。
こちらの不勉強なだけかもしれないが、『プロメテウス』において「それっぽい」以上の緻密な設定や伏線があるようには見えなかった。
黒い液体
冒頭のエンジニアが黒い液体を飲むシーンの回収はされておらず、液体の正体も明かされない。
ホロウェイが飲まされたものと同じにも見えるが、エンジニアは飲んですぐ、黒い無数の虫が身体から飛び出すのに比べ、ホロウェイは変化が現れるまで10時間以上かかっている。
ホロウェイが変異途中で焼き殺されたため最終形態は不明だが、エンジニアと人類はDNAが完全に一致しているのだから、同じ液体であれば同じ反応が出る筈だし、とすると別ものなのか?…という考察が無駄に感じるほど答えは用意されていない。
ついでにデヴィッドがホロウェイに飲ませた理由も明らかにされていない。
覚悟を問われたホロウェイが「何も厭わない」と答えたからにせよ、それまでに液体を用意して隠し持っているわけだし、何が目的だったのか、なぜホロウェイだったのか、少しは回収してほしかった。
まとめ
整合性がなく、解き明かされない謎も多く、製作過程のゴタゴタが反映されているような作品に仕上がってはいるが、映像は素晴らしい。
『エイリアン』シリーズの完璧なエピソードゼロとしてではなく、続編の『エイリアン:コヴェナント』と併せて(実はもう観ちゃった)、外伝的または独立作品として扱うのがよいかもしれない。
「リドリー・スコット」ブランドに惑わされなければ、娯楽映画としては、それなりに楽しめる作品であると思う。
参考:
ブルフィンチ『ギリシア・ローマ神話』岩波書店
Wordproject「レビ記第22章」
大田原キリスト教会「レビ記22章」
ピクシブ百科事典
Wikipedia