個人的な映画・ドラマ日記です。
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感想

公訴時効について
2010年(平成22年)4月27日に「人を死亡させた罪のうち、法定刑の上限が死刑である犯罪」について公訴時効が廃止された。
簡単に説明すると、殺人罪など凶悪犯罪の公訴時効は1908年(明治4年)に15年と定められたが、2004年(平成16年)に25年に延長された。さらに2010年(平成22年)に廃止され、現在は殺人罪による時効は存在しない。
本作品の5つの殺人事件は1995年に起きており、公訴時効は15年となる。
時効が改正される前の犯罪でも、改正時点で時効が成立していない事件については対象となり、時効が延長される。だが最後の爆破事件は2010年4月27日に行われており、どうあがいても時効を迎えている。
捜査技術の進歩などにより時効が延長される場合もあるが、本作品では当然ながら触れられていない。
散りばめられる伏線
初めて本作品を視聴した時から記事を書くまで日を置いたため、もう1度チェックしながら視聴したが、最初に感じた違和感や気がつかなかった伏線がクリアになり、また違う味わいがあった。
例えば、山縣院長と牧村が院長室で話しているシーン。事件の担当刑事と遺族なのだから不自然ではない。会話の内容も。だが院長がチラッと時計に目をやったのは、曾根崎がマスコミを引き連れて病院に現れたことを告げる看護師が駆け込む前だった。
戸田や美晴に襲撃された曾根崎を、牧村が身を挺して庇うのも、後輩刑事が食ってかかるほどにはおかしい。
刑事である義務感は当然なかろうが、行方不明になっている妹の情報を得たい、被害者遺族の美晴を犯罪者にしたくないとの一心で、とも受け取れるが、身体を張りすぎているような気がした。
着替える時に鏡に映った、曾根崎の上半身に残る無数の傷も意味深だった。仙堂の友人のジャーナリストがドイツ人と知るまでは、実は彼が生きていて、仙堂を逆恨みして復讐しに来たのではと想像していた。
「News Eyes」出演の際、曾根崎は鋭く突っ込んでくる仙堂とやり合うが、里香についてはどうも歯切れが悪い。他はガンガン言い返しているのに、防戦一方。頭の回転が速く弁が立つ印象なだけに、避けているのが丸わかりだった。
他にも多々あり、おそらく私がまだ気づいていない伏線もあるのだろうが、流れで見落とすであろう自然な持って行き方は制作側の力量と俳優陣の演技あってのものだと思う。
1度目の鑑賞では、主に前半は曾根崎の正体、後半は事件の真犯人に焦点を絞った謎解きがメインだったが、2度目は、1度目で感じた違和感の答え合わせ感覚も楽しめた。
あ、さりげないけどやっぱり取りやすそうにペン掲げてるじゃん、とか。笑
ファントムペイン
山縣院長がふと漏らした「ファントムペイン」という言葉は、日本語では「幻肢痛」と呼ばれる。
切断した四肢などがまだ存在するような感覚を伴い、痛みを感じる現象のことだが、脳の記憶によって起こる。
四肢を切断するような事態は、戦場でもなければそうそう起こりそうもないが、場所や原因は問わず、病気や事故によるものであっても勿論「ファントムペイン」と呼ばれる。
だが、それをわざわざ「戦場で失った」と強調し、「被害者遺族の痛み(=心の痛み)」に重ねたところが、強烈に真犯人とその動機を示唆しているように思えた。

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整形には無理がある
本作品いちばんの違和感は、野村周平が整形して藤原竜也になったという点。
身長は藤原が178㎝、野村が175㎝と3㎝差なので問題ないとしても、イメージや髪型にもよるのか2人の身長に対して顔の占める面積が結構違い、あまりにも別人がすぎる。
それから声。声帯は筋肉なので、訓練次第では変えることも可能だが、声の質そのものは変えられない。
声を変える手術もあるにはあるようだが、野村は高めの甘い澄んだ声、藤原は低めの少々濁りの混じる声。あそこまで変えることは不可能なのではないだろうか。
作中でも「戸籍と顔を変えた」と言及されるのみで、声については触れられていない。
関西訛りは完璧に直せたとしても、藤原と野村を同一人物とするのは違和感しかなかった。

牧村の処分は?
上司が時間稼ぎを申し出てくれたとはいえ、現役の刑事が捜査情報を利用して告白本を出版したことを生中継で暴露、また真犯人を名乗る男への暴力がこれまた生中継で放映されたのだから、もはや直属の上司の手には余る。即クビとはいかずとも謹慎くらいは食らうのではないか。
牧村が動画から時効関係を発見してくれなければ話が進まないので仕方がないが、何事もなかったかのように署内で後輩と動画をチェックするなど、あり得ない気がする。
その辺りの説明描写は特になく、本筋には無関係なのでなくてもよいのだが、少々脇の甘さを感じてしまった。
東京タワー
作品の冒頭から何倍速かで流れる東京の変遷、殺害風景と警察の捜査。
その中に東京タワーも当然映り込み、美しい存在感を放っていた。
作中の時代の東京のランドマークといえばやはり東京タワーなので、しばしば映ることに何の違和感も覚えていなかったが、時効が成立していないことに食い込んできて「あっ」となった。
ランドマークタワーの消灯やライトアップの変化がトリックに使われることは他の作品でもよく見られることだったのに迂闊だった。
万年筆

文房具好きとしては、仙堂が友人の形見としてお守り代わりに持ち歩いている万年筆が非常に気になった。
ジャーナリストであれば自国メーカーの万年筆を使うのではないかと、ペリカン、モンブラン、カヴェコあたりのドイツメーカーに絞った。
はっきりと見えなかったが、太い胴軸とクリップ、キャップと胴軸の色が違っているようにも見えたことから、ペリカンのスーベレーンではないかと推測。でも作中のものは金のラインがなかったようだし、ペン先ものっぺりした金色だったような気がするので違うかもしれない。
スーベレーンは通常モデルが5万~8万ほどの高級万年筆で、万年筆好きが憧れるうちの1本とされる。モンブランだとしても輪をかけて高価格帯のメーカーなので、友人の形見としては相応しい。
仮にスーベレーンだとすれば制作側のこだわりと意気込みを感じるが、実際の商品を使うのは問題があるかもしれないので、小道具である可能性も高い。少なくとも曾根崎に持たせたもの、正確には血液が付着したものは違う万年筆だろうと思う。
万年筆を使うこと自体、個人的には非常に魅力的だったが、しかも凶器。あれが本物のスーベレーンだったらと思うとゾクゾク感が3割増しだった。
「これはそんなことに使うものじゃない」と仙堂は激怒していたが、いやあんたどの口が。
イケメンは得をする

殺人犯といえど顔面偏差値がものを言うのは現実でも実感する。
まず挙がるのが警察車両に乗せられた犯人の顔、もしくは卒業アルバムやSNSの顔写真である。ワイドショーもSNSも追わない自分でも、ネットニュースなどで犯人の顔は見ることになる。
あくまで事件の経緯や被害者の有無、被害状況以外で、ということになるが、犯人の顔を目にした時、真っ先に出てくるのは美醜の感想になる。
「こんな美形が罪を犯す筈がない」とは決して思わないし、間違ってもファンになることもないが、「せっかく顔がいいのに何で人生踏み間違えたのか」とは思う。
ルッキズムが叫ばれているが、やはり世の中イケメンが得をするようにできている。
他人の容姿をあげつらうのは批判されてしかるべきだが、実際の清潔の度合いは同じだとしても、イケメンだと清潔感があるとことさら持ち上げられ、フツメンは気を遣っていることにさえ気づいてもらえない。
学業でも部活でも仕事でも趣味でもそれは同じ。イケメンとフツメンが顔以外で同等ではダメなのだ。差別意識はなくとも、それは仕方がない。「運も実力のうち」というように「顔も実力のうち」なので、我われ顔面平均偏差値の者は、顔以外で頑張りどころを見つけるしかない。
だが曾根崎は殺人犯。それも時効になってから金を稼ごうとのこのこ現れた卑怯者だ。
藤原竜也クラスのイケメンであっても、持て囃していい存在ではない。
曾根崎については、今さら出てきたのは何か別の理由があるからなのだろうと思っていたが、「ソネ様」などとアイドル扱いで騒ぐ一般人たちには、映画という創作といえ腹が立った。
曾根崎のモデル
モデルというわけではないが、「イケメンの連続殺人犯にファンがつく」という点で、実在の人物が存在する。
80年代の連続殺人鬼、イタリア人のロベルト・スッコは、両親を始め次々に殺人を行う中で恋仲になった女子高生に通報されて逮捕された。その甘いマスクにマスコミから「天使の顔」と称され、ファンクラブができたという。
同じく80年代のアメリカ人、リチャード・ラミレスは、老若男女問わない殺人や強盗に手を染め、手配犯と気づいた民衆に袋叩きにされ逮捕。その時は異臭を放ちホームレス然としていたが、法廷に現れたイケメンぶりから熱烈なファンを集めた。ファンの1人と獄中結婚までしている。
最後はオーストラリアのチョッパー・リード。こちらはイケメンではないが、60年代からギャングとして活躍(?)し、出版した自伝がベストセラーに。売れっ子作家となり、「チョッパーガールズ」と呼ばれるファンのうちの1人と結婚した。

いずれの殺人犯も映画化されてます

チョッパーガールズて…
まとめ

セピア色がかった画質はどこかノスタルジックで昭和っぽくもある。それでいて鮮明でとても好みだった。
藤原竜也×伊藤英明という好きな俳優のW主演+トオルに加え、矢島健一や平田満というお馴染みの好きなオジサマ俳優陣も見られて、出演者の面でも満足な作品だった。
曾根崎の告白本が書店に並ぶ様子は、等身大パネルなども用意され、実際の大ベストセラーのようにリアルだったし、サイン会も曾根崎ガールズ的なモデルを始め、会場から大道具から見応えがあった。
「ファントムペイン」と万年筆で、中盤辺りで真犯人の目星はついたものの、曾根崎の正体には興味津々。早々に判明してからも、これからどう犯人に迫るのかワクワクした。
個人的には実際に起きた災害を創作のエッセンスにするのは好きではないので、阪神・淡路大震災を取り入れることには少々抵抗があったが、1995年を強烈に印象づける意味ではこれ以上のものはない。
それに里香と拓巳が牧村のアパートに身を寄せる、里香が自責の念に苦しむという2点を易々とクリアできるのも、大震災以外にない。
言い方は悪いが非常に都合がよく、視聴者の感情にも訴えやすい。その便利さというかオールマイティさというか、に嫌悪感を持ってしまうのだが。
時効の撤廃などについても、物語とは離れたところでいろいろと考えさせられた。
そういう意味でも素晴らしい作品だと思う。
あ、2度目の鑑賞で確認したら、仙堂に密着取材していた番組クルーはやっぱり『両刃の斧』のラクダ男こと黒田大輔だった。こういうのは何だか妙に嬉しい。

あと「22年経っても写真を飾ってるくらい思いがあるなら、忘れ形見の息子はまともな人生歩ませろよ岩城ィー」ってなったわ

それからお金持ちかお医者様の協力者がいると何かといいよね♪

結局はそこだよね♥
参考:
警察庁「コラム5:公訴時効制度の改正について」
法務省「公訴時効の改正について」
ベリーベスト法律事務所「「時効」の意味とは? 刑事事件における時効を犯罪別に解説」
ベリーベスト法律事務所「殺人罪の時効は何年? 罪を犯してしまった場合の弁護活動」
刑事事件相談弁護士ほっとライン「時効は何年で成立する?時効の種類や注意事項について詳しく解説」
『22年目の告白 -私が殺人犯です-』公式サイト
Wikipedia