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今年のMVP

あず日記
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我が家の愛犬、ラブラドールのあずは現在9歳。
今のところ定期的な受診が必要な持病はなく、基本的に動物病院に行くのは、8種混合ワクチン接種と狂犬病予防接種の年2回。

かかりつけのクリニックは予約制ではなく、混んでいる時は1時間以上待たされることも多い。
例年、空いている時間を狙いすましては、風のごとく脱兎のごとく接種に行っていたが、昨年辺りからいつ行っても非常に混むようになってしまった。
今までは予め電話を入れて混み具合など訊くこともできたが、こういつも混んでいると電話も憚られる。

ワクチン接種を終え、狂犬病予防接種の日。
クリニックでは今年、副反応の重い子が比較的多いと聞かされ、平日の午前中に来院。
流石に空いているだろうと思ったら、駐車場には既に車がギッシリ…。
思わずUターンしたくなる衝動を抑えて受付を済ませたが、40分待ちと言われ茫然。
とりあえずワイヤレス式の呼び出しブザーをもらい、車内で待機する。

ところで、あずは車内では当然のように私(=のりまき)の膝に乗ってくる。
重い、暑苦しいのはよしとして、本人は腹が圧迫されて苦しくなるらしく、頻繁に下りたり乗ったりを繰り返す。これが非常に面倒くさい。
でかい肉球で太ももに踏ん張られたり、ガサガサ肉球で手の甲を擦られたり、爪があちこち引っかいたり食い込んだりと、そこそこ落ち着いてきた今でも散々な目に遭わされる。
通院時は基本的に長袖で足も出さないが、布越しでも青あざやミミズ腫れになるので、やはり大型犬種は侮れない。

そんな状態で…よ、40分…。

絶対40分じゃ呼ばれないだろうと思っていたら、大正解。その日は1時間をゆうに超えた。
動物病院では、今まで実際に見たことのない犬種や個人的に好きな犬種を見られるので、待ち時間が短い時はとても楽しみなのだが、1時間は長い。…と思ったものの、やはりやってきた犬たちがクリニックの出入口で見せる表情と態度は最&高すぎる。
ほとんどの犬が、動物病院がどのような場所か理解している。それはもう切実に。

それでも流石にわんこウォッチングにも飽きてきたかな、という頃。
小型犬を抱っこしている方が似合いそうな、華奢で優しい印象のご婦人が、にこにこ顔のまま焦りつつ、後ろ向きに斜めになって眼前を横切っていった。
その先を目で追うと重量級のブルドッグが。

車内からは横切る婦人しか見えなかったので一瞬焦ったが、大型犬連れと知ってひと安心。
ブルちゃんはブルドッグらしい無表情で、一心不乱にクリニックの出入口の方向に小走りしていた。
「おっ、珍しく自分から入るスタイル?」と思っていたが当然そんな筈もなく。
おそらく私と同じように思っていたであろう婦人も、「あらあら自分から入るの?いい子ねえ」という表情を浮かべていたが、我に返ってUターンしたブルちゃんに引きずられるように、また私の目の前を逆向きに横切っていった。
「こりゃ普段の散歩や世話は旦那さんかな」と微笑ましく見守る。

それから絶え間なく何往復かしていた婦人は、やっとこさ出入口まで来たものの、今度はその場で立ったまま動かない。不審に思い首を伸ばすと、ブルちゃんがにおいを嗅いでいるのを待っている様子。
「心の準備ができるのを待ってあげてるのかな?」と思いきや、ブルちゃん突然Iターン。
当てが外れて「あらあらあら~~~」と引きずられ、あっという間に視界から消える婦人。

しばらくして戻ってきたブルちゃんは、なぜか出入口の真ん前で仁王立ちになったまま動かない。
婦人は困ったように笑いながら、こちらもなぜか何もせずブルちゃんの後ろに立っているだけ。
私は一緒に走ってあずが嬉しそうに見上げているうちにだまくらかして院内に入るか、「えぇ~」という顔をしていても有無を言わせず命令して入らせるが、この場合ならお尻を足でグイグイ押して無理やり入れるので、婦人の辛抱強さや穏やかさは新鮮だった。

そうこうしているうちにブルちゃんはやっと院内に消えていき、あずも呼び出しが来たので待合室に連れていく。
ブルちゃんはあずよりも順番が先だったが、看護師さんに名前を呼ばれても無視を決め込んでいた。
看護師さんとは目を合わせず、飼い主を振り返ることもなく、ただ「無」
にこやかながら百戦錬磨感の漂う看護師さんは、婦人を手伝うふりをして容赦なくブルちゃんを的確に診察室に追い込んでいく。

「フヒィ~ン」

それまで無言だったブルちゃんのか細い悲鳴が、診察室に吸い込まれていった。

肩を震わせる待合室の面々。

笑いをかみ殺しているのは飼い主ばかりで、床にオスワリしているわんこたちは我関せず。一様に不穏な表情で固まっている。
抱っこされている小型犬の中には、「あれ何、ねぇ飼い主、もしかして自分も?」とでも言いたげに、忙しなく診察室の入口と飼い主を交互に見やる子もいた。

もちろん明日は我が身のあずも、足の間に挟まってオスワリしたまま微動だにしない。
心ここにあらずといった風で、おそらくブルちゃんのことなど見えていないし聞こえていない。

…と、数分と経たずにブルちゃんが診察室を飛び出してきた。
どうやらこちらも、ワクチンか狂犬病予防の接種だったもよう。
そしてお礼を言いかける飼い主を強制連行して、出入口にまっしぐら。看護師さんに向けた笑顔のまま、婦人は後ろ向きに斜めになってまたもや眼前を横切っていった。

にこやかに見送る待合室の面々。

見るからにブルドッグに対する外での扱いが不慣れな婦人は、長袖ポロシャツにスラックスという少々ご本人には不釣り合いな感じの軽装で、さらに腰にリード用のベルトを巻いていた。
いつも連れていくご家族の都合がつかず、決死の覚悟で連れてきたのかなという印象だった。
だが、婦人にはお気の毒だったが、ブルちゃんとの組み合わせは最高だった。

ブルドッグは初めて実物を目にしたが、予想よりも足が長く、頭が小さく、長方形に近い体形だった。
毛色からはブルドックだと思うが、写真などで見るイメージとも結構違っていたし、もしかして違うのかしら。
顔立ちはブル寄りのブルマスティフといった感じ。顔のシワも深くはなく数も少なく、マズルも白っぽかったので、身体は成犬サイズでも1~2歳の若犬だったのかもしれない。

あずが元気なうちは病院に行くこと自体少なく、今後、同じ日時に受診が重なることはほぼないと言っていい。
動物病院での出会いは一期一会。ブルちゃんを再び見る可能性は限りなく低いが、今年もいい光景を見せてもらって大満足だった。
マズルが短い犬種は特に、これからの蒸し暑さは大変だと思うが、あの優しそうな飼い主さんなら、マメにお世話して気を配ってくれることだろう。この先のブルちゃんの幸せを、願いつつも確信して、あたたかい気持ちになった。

それにしても似てる似てると思っていたが、間近で見たブルドッグは、やっぱり走り方がガラパゴスリクイグアナに激似だった。

のりまき
のりまき

あと予想以上に足が遅かった!
診察室から出ていくのも「のそのそ」「とたとた」って感じで「おまっ、逃げ出してるのにっ!そのスピード!」って噴きそうになったわ

あず
あず

ブルドックってちょっと怖いイメージがあったけど、穏やかな感じで意外だった

あず
あず

でも「絶対行きません」って強固な意志は感じた

のりまき
のりまき

いやオマエもな?