「犬に与えてはいけない食べ物」シリーズ。今回は「海藻」です。
魚や貝は、犬に与えてはいけないものも多いのですが、海藻はどうなのでしょうか?
与えてもよいが注意が必要
犬は元々、海洋生物の消化がうまくできないため、魚介類にはNG食材が多数あります。
個人的には、海藻も食べさせてはいけないような印象がありましたが、意外に「これは絶対に与えてはいけない」という海藻はありません。
ただし消化不良を起こしたり、塩分過多になる可能性があるため、与える量には気をつける必要があります。
食品 | 生食 | 加熱 | 注意点 |
寒天 | – | 〇 | 低カロリーでミネラルを豊富に含み、ダイエット用食材に向いている 寒天アレルギーの場合があるので、少量を与えて様子を見る |
昆布 | △ | △ | ビタミン・ミネラル・水溶性食物繊維が豊富 消化不良を起こす場合があるので、トッピング程度に与える 粉末にするか細かく切って煮込んで与える 市販の昆布茶や佃煮など、塩分を含むものは与えない |
海苔 | – | △ | 腎臓や甲状腺の病気の犬は注意 乾燥した海苔は口の中に張りつくので、水でふやかして与える 味つき海苔は糖分・塩分が多いため与えない |
ひじき | × | △ | 犬にはカルシウムが多すぎるため、尿石症などになりやすい トッピング程度に与える 人間用に味つけした煮物やサラダなどは与えない |
わかめ めかぶ |
– | △ | 犬には食物繊維が多すぎるため、消化不良になりやすい 細かく刻んで加熱したものを少量、トッピング程度に与える 乾燥わかめはそのまま与えず、必ず戻してから与える 人間用に味つけされたものは与えない |
与えるポイント
少量を与える
主食のフードに少量をトッピングする程度に与えます。
おだしにしたり、野菜や肉と一緒に煮てスープとして与えるのもお勧めです。
塩分過多に注意
海水の塩分が含まれているものも多いので、商品としては無塩のものを選び、湯通ししたりして塩分を抜きます。
人間用に味つけされたものは与えないようにしましょう。
乾燥のまま与えない
乾燥わかめや寒天など、そのまま与えてはいけません。
柔らかくもどしたり、スープなどにして与えます。
小さく切る
どの海藻も小さく切ったり、ちぎったりして与えます。
特に小型犬の場合は、喉に詰まらないように細かくします。
アレルギーに注意
海藻を初めて与える時は、ごく少量を与えて様子を見ます。
以下の症状が現れた場合は、アレルギーが疑われるので、動物病院を受診しましょう。
- 下痢
- 嘔吐
- 皮膚のかゆみ
- 目の充血
ヨウ素に注意
昆布・ひじき・わかめ・海苔などに多く含まれる「ヨウ素(ヨード)」は、甲状腺ホルモンの主原料であり、身体に不可欠なミネラルです。
甲状腺ホルモンは、代謝をはじめ様々な機能の調節や、成長ホルモンとともに子供の成長を促進する働きがあります。
日本人は海藻を日常的に食べる習慣があるので、ヨウ素が欠乏することはほとんどないとされます。
逆に過剰摂取すると、甲状腺機能低下などを引き起こすので、注意が必要です。
食品 | 含有量(µg/100g) |
刻み昆布 | 230000 |
昆布茶 | 260000 |
干しひじき(乾) | 45000 |
わかめ(乾燥・水戻し) | 1900 |
わかめ(乾燥・カット) | 10000 |
干しのり(あまのり) | 1400 |
焼きのり(あまのり) | 2100 |
粉寒天(てんぐさ) | 81 |
愛犬にも、ヨウ素を多く含む食品を、大量に与えたり、継続して毎日与えたりするのは避けた方が無難です。
昆布
昆布は犬に与えてもよい海藻です。
ミネラルを豊富に含み、適量であれば愛犬にも健康効果が期待できます。
与える時の注意点
昆布自体には、愛犬の健康を害する成分は含まれていませんが、犬にとっては消化のしにくい食品です。
また昆布は最も多くのヨウ素を含んでいます。
大量に与えたり、継続して与え続けることは避けてください。
与えてはいけない昆布製品
昆布茶や佃煮などの人間用の加工品には、塩分や醸造酢が含まれているので、犬には与えないでください。
手作りごはんなどに、粉末や顆粒の昆布だしを使う場合は、塩分が含まれている商品もあるので、事前に表示を確認してください。
昆布の与え方
硬いままの昆布は与えず、必ず粉末にするか、細かくしたものを煮込んでから与えてください。
お勧めは昆布水
容器に水1L・だし昆布10g程度を入れ、一晩ほど冷蔵庫に置きます。
昆布は細く切ると、だしが早くよく出ますが、容器に入る大きさなら切らなくても大丈夫。
できあがったら昆布は取り出してください。
愛犬用のだしやスープ、水分補給に使えます。もちろん人間用のだしにもできます。
作った昆布水は冷蔵庫で1週間ほど保存できますが、なるべく早めに使い切ってください。
取り出した昆布は柔らかくなっているので、細かく切ってフードのトッピングにしたり、人間用のふりかけや佃煮に再利用することができます。
寒天
寒天は犬に与えても大丈夫な食品です。
ほとんどが食物繊維のため、低カロリー。ミネラルも豊富に含み、人間用のダイエット食材としてよく活用されていますが、愛犬のダイエットにも使うことができます。
与える時の注意点
水でもどす
人間が摂取する時と同じ、必ずたっぷりの水でもどします。
寒天には主に棒寒天・糸寒天・粉寒天がありますが、いずれも絶対にそのまま与えないでください。
アレルギー
実は寒天にもアレルギーが存在します。
まれに寒天アレルギーを持つ犬もいるので、初めて与える時には、少量を与えて様子を見ましょう。
下痢
寒天には多くの食物繊維が含まれているため、便秘に効果がありますが、与えすぎると下痢を引き起こします。
体質によってもお腹を壊すことがあるので、気をつけてあげましょう。
腎臓への負担
寒天はミネラルが豊富ですが、摂りすぎると腎臓に負担がかかります。
かなり大量に摂取しなければ腎不全には至りませんが、与えすぎには注意しましょう。
与える目安
愛犬にどのくらい寒天を与えてよいかという目安については、無害な食品だけに、判断が難しいようです。
適正量は個々で異なるので、少量から始めて、様子を見ながら飼い主さん自身が判断するしかありません。
愛犬のダイエット用に取り入れる場合は、フードに少量を混ぜたり、減らしたフードの分だけかさまししている飼い主さんが多いようです。
大量にできた寒天の利用法
寒天は1度に結構な量ができますが、愛犬が必要なのは少量です。
与えすぎになるよりは、人間と兼用にして食べきりましょう。
作った寒天は冷蔵保存で2~3日もちます。
冷凍保存するとスカスカになり、半解凍くらいで与えたり、スープの具にすることもできますが、人間が食べる分にはあまりおいしくありません。
ポイントは無糖
犬に与える寒天は無糖が基本です。
人間が食べる場合には、黒蜜など甘味を後から足しましょう。
ヨーグルト寒天には市販のフルーツソースや、ジャムをお湯でのばしたソースを。
ささみの寒天寄せやトマトジュース寒天は、ドレッシングをかけてサラダのトッピングに。
飼い主さんもヘルシーな食卓を楽しむことができます。
牛乳が大丈夫な子なら、無糖の牛乳かんもOK!
あたしヨーグルト寒天が食べたい!
あずはヨーグルトが好きだし、太りやすいから、寒天はよさそうだね♪
今年の夏は、みんなで寒天ライフ♪
参考:
厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』
厚生労働省『日本人の食事摂取基準』-「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書-ミネラル(微量ミネラル)
伊藤病院「ヨウ素と甲状腺の関係」
文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ほか