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迷子のわんこが事故死~マイクロチップの問題?~

わんこ雑記
この記事は約14分で読めます。
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2022年2月19日、Yahoo!ニュースにおいて「マイクロチップ確認されず、処理された愛犬 飼い主ら制度の盲点嘆く」という毎日新聞の記事が配信されました。
その後、dmenuニュースなど他の媒体でも取り上げられましたが、内容はいずれも同じです。

事件概要

「学生愛護団体ワンニャンピースマイル」Twitterより

2022年1月下旬に高松市内で散歩中、迷子になった元保護犬「こつぶ」(当時2歳のメス)が、交通事故に遭い死亡。
警察署から飼い主に連絡があったものの、亡骸は道路を管理する土木事務所により既に処分され、対面は叶いませんでした。
こつぶにはマイクロチップが装着されていましたが、高松市では事故死の犬猫を読み取りの対象とはしておらず、衛生面の問題もあり、ごみ処理施設で処分されたそうです。

飼い主の女性は「愛犬の死を無駄にしたくない」と取材に応じ、また、こつぶを譲渡する際や迷子の探索時にも支援していた「学生愛護団体ワンニャンピースマイル」もSNSで声明を出しました。

記事全文は以下でご覧になれます。→「マイクロチップ確認されず、処理された愛犬 飼い主ら制度の盲点嘆く」

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時系列

記事やSNSから時系列で並べてみます。
(推定)と横にある年月日は、月齢などから私が推定したものです。

こつぶの一生

こつぶの一生
  • 2020年10月頃(推定)
    保護

    野犬の子犬として、生後1カ月でさぬき動物愛護センター「しっぽの森」(同市)に保護される。

  • 2021年4月
    引き取り

    高松市内のドッグサロン「ハレル」に引き取られ、人に慣れる訓練を8カ月受ける。

  • 2021年12月頃(推定)
    譲渡

    「学生愛護団体ワンニャンピースマイル」の支援で市内の家族に譲渡される。

  • 2022年1月22日
    迷子

    市内を散歩中、リードを引っ張った際に首輪が抜け、逃走。

  • 2022年1月24日
    事故死

    自動車による交通事故で死亡(2歳)。

「学生愛護団体ワンニャンピースマイル」Facebookより

一連の経過

一連の経過
  • 2022年1月22日
    迷子

    市内を散歩中、こつぶがリードを引っ張った際に首輪が抜け、逃走。
    飼い主は警察・保健所に連絡。
    「ワンニャンピースマイル」の協力も得て、ポスター・SNSで目撃情報を集める。

  • 2022年1月24日
    事故

    事故になった運転手が警察に連絡。

  • 2022年1月25日
    警察から飼い主に連絡

    高松南署から「昨夜車にひかれた犬の特徴が、警察への届け出の情報と一致した」と電話が入る。

  • 2022年1月25日(推定)
    土木事務所に連絡

    飼い主は「直接確認しないと愛犬かどうか分からない」と訴えたが、亡骸を回収した土木事務所によると「回収時には既に袋に入っていたため、衛生面からそのまま処分した」とのこと。
    事故現場で撮影された写真を確認し、体の大きさ・色・模様からこつぶと判断。

  • 2022年1月25日
    SNSで報告

    「ワンニャンピースマイル」が「マイクロチップの意味は?問い合わせの意味は?納得いきません」などと運営する各種SNSに投稿。

    「学生愛護団体ワンニャンピースマイル」Twitterより
  • 2022年2月2日
    SNSで声明

    飼い主が自身のTwitterアカウントで、マイクロチップ運用が変更されるよう声を上げる。
    「協力してくださる政治家の先生、新聞記者様」とミーティングしたことを明かす。

  • 2022年2月19日
    新聞記事の配信

    Yahoo!ニュースで毎日新聞の記事「マイクロチップ確認されず、処理された愛犬 飼い主ら制度の盲点嘆く」が配信される。

    その後「ワンニャンピースマイル」の運営する各種SNSにて記事の紹介や問題提起がなされる。

  • 2022年2月22日
    紙面に掲載

    毎日新聞の紙面に記事「迷い犬の最期に会えず 生かされなかった個体識別チップ 事故死想定なく回収業者が処分」が掲載される(内容はWeb版と同じ)。

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反応

SNS

飼い主や「ワンニャンピースマイル」のツイートに対して、リプライなど直接に反応した人は、賛同する愛犬家・愛猫家の方がほとんどでした。
飼い主の落ち度に対する批判はみられませんでした。

2022年6月にペットのマイクロチップ装着が義務化されますが、彼らの主張としては、義務化するのであれば、事故死した動物に対してもマイクロチップを読み取り、飼い主に返してほしいというものでした。

ちなみに交通事故などで亡くなった動物については、遺骸の扱いやマイクロチップを読み取るかどうかなどの対応は、各自治体で異なっているのが現状です。
高松市では、マイクロチップを読み取るのは、生きて保護された子に限っていました。

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Yahoo!ニュースのコメント

配信当日は1600件超、次の日には2000件超のコメントが寄せられていました。
個人的に非常に関心のあるニュースだったので、コメントもつぶさに見ました。

施行する側の負担について

・読み取りだけではなく、遺体の保管や飼い主への連絡などの業務も生じることになるが、行政や業者にそこまでの負担を強いるのはどうか
・事故死した動物の遺体はひどい状態になっていることも多く、マイクロチップが破損したり消失したりする場合も考えられる。損傷の激しい遺体にスキャナーを読み取れるまでかざすのは、作業する人の非常な負担にならないか
・全国の関係者すべてにスキャナーを携帯させるのは費用もかかり、手間も増え現実的ではない
・(読み取りを義務化したとして)読み取れずに処分した場合、猛烈な批判・非難に晒されるのではないか
・死亡して日が経った場合や飼い主がすぐに引き取れない場合なども考えられ、感染症など衛生面の問題はどうするのか

コメントの先頭には、まねき猫ホスピタル院長である、石井万寿美獣医師の意見が掲載されていました。
「全国の事故死した子やごみ処理施設に持ち込まれた亡くなった子も全てマイクロチップを読み取るべき」「読み取り機を手元に置いておくと、1、2分で終わる作業ですから」というコメントに反発を覚えた方も多かったようです。

相方
相方

うちの子もマイクロチップは装着してるけど、あくまで「災害などで迷子」を想定してて、「脱走して事故死」は考えてなかったわ

のりまき
のりまき

「袋越しに数回読み取る」という作業を全国で統一して行ってもらえたら、飼い主としてはありがたいなぁ

あず
あず

読み取れないこともあるだろうけど、それは仕方ないよね

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飼い主への批判

・飼い主として最低の保護義務を果たしてから文句を言ってほしい
・議論すべきは脱走防止の徹底であって、主張の方向が違う
・野犬出身の保護犬に首輪のみ、すぐに抜けるような着用ではダメ
・犬を轢いた人間の気持ちはどうなるのか
・他人に危害を加える可能性もあったのだから、逃がした飼い主が一番悪い
・譲渡されて1ヶ月で事故死させるなど言語道断

「故意にリードを離したわけではない」「飼い主さんは誰かを非難しているわけではない」という声も見られましたが、愛犬家らしき方々からも、飼い主さんの不手際を糾弾する厳しい声が上がっていました。

相方
相方

ノーリードにさせないように、飼い主が十分気をつけるのは当然だけど、何事にも「絶対」はないからねぇ

のりまき
のりまき

批判的な愛犬家の人たちは、2歳で死んじゃったその子が不憫だったんだろうね

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その他

・マイクロチップは万一の時のための保険なのだから、それに頼っていい加減な飼育をしないように、動物を飼う人間全員が自戒すべき
・迷子の扱いやマイクロチップの確認など、愛護センターや警察、動物病院などではバラバラで統一されていない。義務化や規則化されていな日本では、盲点が多く、愛犬を守るのは飼い主がすべて
・野犬出身の子は脱走しやすいので、ハーネス着用やダブルリードは基本

相方
相方

野犬関係のあれこれは「へぇ~そうなんだ」って感じで参考になったよ

のりまき
のりまき

その子の犬種やバックボーンも考慮して、合わせたやり方をすべきなんだろうね

個人的な感想

警察の対応に驚き

記事には、警察署から「事故死した犬の特徴が、届け出にある特徴と一致した」と連絡があったと書かれています。
生きて保護された犬ならともかく、今どきの警察は、事故死した首輪のない子の特徴まで照合して、すぐに連絡をくれるのかと、驚きました。

撮影をされたのは、警察か遺体を回収した土木事務所か分かりませんが、事故現場の写真まで残っていることにも、驚きました。

食い違いやすれ違いはあったにせよ、現行の制度の中で、関係者の方たちは精一杯の対応をしてくださったように、私には思えます。
直接やりとりをした飼い主さんや愛護団体の方たちは、歯がゆい思いもされたでしょうが、現場を責めるのはどうなのかな?と感じました。

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主張は理解できるが…①

マイクロチップを巡る諸々は、犬飼いの一人としては、非常に関心の高い問題です。
個人的には、自治体で対応が異なる現状は改善してほしいと思っています。

飼い主側がどれほど気をつけていても、何事も「絶対」はありません。
散歩中だけでなく、うっかり室内や庭から犬や猫が脱走するということもあり得ます。

ビニール袋越しに読み取れるスキャナーもあるので、できれば回収した後にマイクロチップの確認を、どの自治体でも統一して行われるようになれば、もし万一の時でも、愛犬や愛猫が手元に戻る確率が上がると思います。
少なくとも行方不明になったまま、どうなったか分からないよりかは、気持ちの整理もつくのではないでしょうか。
ただ、人間のご遺体並みの扱いを期待するのは、少なくとも現状不可能だろうと思います。

システムを変えるということは、そのための費用がかかり、誰かの負担が増えるということなので、「納得がいかない」と現場を責めたり、「それくらいの手間」と業務を軽んじる言動は、一般の人々の反感を買うだけなのではないでしょうか。

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主張は理解できるが…②

今回の発端となったこつぶの死は、申し訳ないのですが、飼い主さんの過失が原因です。
「首輪が抜けて逃げた」ということから、ハーネスは着用しておらず、首輪のみをゆるめに着けていたのではと推測されます。

厳しいことを言いますが、「故意に手を離したかどうか」は関係ありません。
結果がすべてです。
多くのコメントにもありましたが、「愛犬が事故死した」だけでは済まなかった可能性もあります。

愛犬を亡くす悲しみは、もちろん痛いほど理解できます。
誰が責めなくても、自分の迂闊さを後悔していらっしゃることでしょう。

ただ、そこで「首輪だけの散歩は危険」「脱走防止の徹底」などを掲げられたのであれば、おそらくこれほど批判や非難はされなかったと思います。
「事故死した愛犬が勝手に処分される制度はおかしい」と、大々的に外に指を向けた時点で、責任転嫁のように受け取られるのは、仕方がないかもしれません。

その覚悟をお持ちの上で、取材を受け、行動を起こされたのなら、主張自体には(少々の相違はあれど)賛成なので、頑張っていただきたいと思います。

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記事の切り取り方が問題?

Yahoo!ニュースでは、批判的なコメントが目立ちましたが、私は記事の冒頭にあった「迷子の『こつぶ』がごみ扱い」という、扇動的な一文が要因なのではと感じました。

これは「学生愛護団体ワンニャンピースマイル」のSNSの投稿であり、飼い主さんが発した言葉ではないのですが、混同してコメントをされているのではないかという書き込みが多いように見受けられました。
「愛護団体の半ばケンカ売るようなSNSの投稿もどうかと思う」というコメントもありました。

一連の投稿はひと通り拝見しましたが、確かに「ワンニャンピースマイル」は「こんな形でごみ扱いされている子がいる」「ゴミ扱いやめてほしいです」と投稿されています。
またドッグサロン「ハレル」は、警察と土木事務所の連携について「理解できるものではないし、許される行為ではない」と批判されています。

「学生愛護団体ワンニャンピースマイル」Facebookより

関係者であれば、感情的な発言になるのも無理はないと思いますが、それでも、ひたすら制度や携わった方たちの不備を責めるような投稿には、違和感を覚えました。

毎日新聞の記事にしても、関係者の感情的・攻撃的な発言をそのまま伝えており、共感がしにくくなっていると感じました。
耳目を引くのは大切ですが、飼い主さんや団体への反感を買うような書き方は、賛同が得られず、せっかくの問題提起に水を差すだけなのではないかと思いました。

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飼い主が悪者になってしまう

「学生愛護団体ワンニャンピースマイル」やドッグサロン「ハレル」の投稿を拝見すると、飼い主さんの落ち度にはまったく言及がなく、連携のとれていない行政やマイクロチップが生かされていない制度に対する批判・非難に終始しています。

ですが、本当にマイクロチップだけの問題なのでしょうか?
飼い主さんを責め立てる必要はありませんが、あまり攻撃的な言い方をすると、主張が正当であっても、関係のない人や関心のない人の反感を買います。

飼い主さんの投稿も拝見しましたが、彼女はそれほど強い表現はされていません。
でも「自分が逃がした癖に棚上げして何を言っているのか」というようなコメントが多く見られたのは、Yahoo!ニュースの記事や、「ワンニャンピースマイル」など周囲のきつい言い方に対する反発が、ミスをした飼い主さんに集中したためではないでしょうか。

いち個人がネットで批判の的にされるのは、精神的負担が大きすぎます。
制度の改革自体や、愛犬家全体に対しても、よい影響は与えないように思われます。

外に向けての発言には、感情的に納得のいかないものであっても、いろいろな立場や考え方の人が目にするのだという意識を持ち、表現に気をつけた方がよいのではと思いました。

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マナーの悪い犬飼いへのヘイト

今回は「散歩中に愛犬を脱走させて死なせた」という経緯が、個々人の嫌な記憶や経験を思い起こさせた部分もありそうです。

ノーリードの犬に対する恐怖や、そうさせた飼い主に対する怒りは、愛犬家でも感じる方は多いのではないでしょうか。
「ドッグランではない公園で、ノーリードの犬に愛犬が襲われた」という話は、よく見聞きします。

また、今でも愛犬の糞を放置している飼い主もいます。
私も、犬の糞を持ち帰るように立てられた看板のすぐそばに、糞が放置されている場面に、つい先日も遭遇しました。

そういった「無責任でマナーの悪い飼い主」への悪感情により、批判的なコメントが多く寄せられた側面もあるかもしれません。

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事故死の遺体は悲惨

私は中学生の頃、交通事故死した猫の遺骸を片づけたことがあります。
片づけている間、車が来ないか見張ってくれる級友もいましたが、気味悪がったり、私に好奇の目を向ける生徒もいました。

その猫が、私が幼い頃に死んだ飼い猫と同じ毛色でなかったら、また遺骸の損傷が激しかったなら、私も、いくら可哀想でも見ているだけだったかもしれません。
それに、安全面・衛生面から考えても、少々無鉄砲すぎたと今では思います。

また大学生の頃、自転車で走行中、鳩の死骸に出くわしたこともあります。
その時は薄く雪が積もっており、直前まで気がつきませんでした。
そのまま走行していれば、轢き潰すところでした。

避けようもなく死骸の真横を通ったのですが、鳩であることが辛うじて判る状態でした。
ギョロリと飛び出した目と目が合ってしまい、思わずハンドルを切って車道に飛び出しそうになりました。

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のりまきの本音

本当の被害者は

罪のない動物の死を目の当たりにするのは、つらいものです。
そして私が遭遇した事故死した動物の遺骸は、まだましな状態だったのだろうと思いますが、それでも決して気持ちのよいものではありません。

一番の被害者は、死んだこつぶ。
そして哀れな遺体を回収して処分し、情報を照合した方たち。
意図せず加害者になってしまったであろう運転手の方。
譲渡するまで世話をして可愛がり訓練をした方たち。

「絶対」がない以上、私もいつ愛犬から手を離すか分からない。
だから理性では飼い主さんを責めたくはないし、主張の方向が違うと非難もしたくありません。

でも、自分が片づけた猫の姿や感触がよみがえり、やるせなくなりました。
悲惨な状態の鳩に驚いて、危うく自分まで車に轢かれかけた、ヒヤッと感も思い出しました。

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違和感の原因

相方とも話しましたが、主張の意図は「脱走して事故死した場合」を想定したものでした。
私たちが感じた違和感は、そこだったのだろうと思います。

もちろん犬飼いとしては、万一の場合でも、どの自治体でもマイクロチップを確認してもらえるようになれば理想的です。

ただ、主張の仕方が他責で攻撃的すぎた。
また声高に主張するには、飼い主さんの落ち度が比較的大きかった。
そして今回の場合、まず重要視されるべきは「脱走をさせないための注意喚起」だった。

死んだあとのことよりも、いかにして死なせないようにするか。
今現在、犬や猫を飼っている私たちには、その方が大切なのです。

今回の毎日新聞の記事は、正直言うと、あまり快いものではありませんでした。
でも、せめて自分の手の届く自分の家族だけは、あんな目に遭わせたくない。
愛犬も自分も、加害者にも被害者にもならないように、今まで以上に気をつけなければならないと、家族で深く考え、意識を新たにするよい機会となりました。

のりまき
のりまき

何となくだったマイクロチップについて、調べる機会にもなったので、また記事にしたいと思います

参考:
環境省「マイクロチップによる動物の個体識別の概要」
環境省「動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置」
環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A」
子犬のへや「犬と猫のマイクロチップ・完全ガイド~仕組みやメリットから副作用リスクまで」
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