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犬に与えてはいけない食べ物~魚介類~①魚介

わんこのトリセツ
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シリーズ化した「犬に与えてはいけない食べ物」。今回は「魚介」です。
魚介にも、ワンコが食べていいものといけないものがあります。

家族が食事中に、お刺身をちょこっと分けてもらうワンコも多いのではないでしょうか?
しつけ的にはともかく。笑
飼い主が、与えてよいものといけないものを把握しておくことで、安心して与えることができます。

絶対に与えてはいけない魚介

塩分過多や消化不良のほか、「チアミン欠乏症」を引き起こす可能性があるため、特に生では与えてはいけません。

食品 生食 加熱 注意点
イカ
スルメ
× × 消化不良やチアミン欠乏症の原因になるので与えない
スルメは胃の中で膨れるため危険
珍味の味つけされたイカ・スルメは塩分・糖分・添加物が多い
どうしても与えたい場合は加熱して小さく切り、少量にする
エビ × × 消化不良やチアミン欠乏症の原因になるので与えない
加熱したものをごく少量であれば問題ない場合もある
犬用のエビを使ったおやつも、体質によっては合わないこともある
カニ × × チアミン欠乏症の原因になるので基本的に与えない
加熱したものをごく少量であれば問題ない場合もある
甲羅や殻は取り除く
甲殻類アレルギーに注意する
塩鮭 × × 塩分過多になるため、人間用の塩鮭は与えない
シシャモ × × 塩漬けして干してあるため、塩分が非常に多い
タコ × × 消化不良やチアミン欠乏症の原因になるので与えない
ごく少量をうっかり食べた程度では問題ないが、大量に食べたり異変が見られたら動物病院を受診する
フグ × × フグ毒に当たる可能性がある
誤って食べ、嘔吐・下痢・けいれんなどの症状が見られたらすぐに動物病院を受診する
魚肉ソーセージ
(人間用)
× × 人間用の商品は塩分・添加物が多く、タマネギが入っていることもあるので与えない
犬用の商品はビニールごと食べないよう注意する
小型犬は特にカロリー過多になるため「おやつ」として適量を与える
魚の骨 × × 内臓を傷つけたり刺さった箇所が炎症を起こす危険がある
魚を与える時は完全に骨を取り除くか、ミキサーにかけたりすりつぶしたりする

魚のエラ
はらわた

× × エラは骨と同じく喉や内臓を傷つけるおそれがある
内臓は傷みやすく、身と比べて汚染度が高いため、与えない方が無難

チアミン欠乏症とは?

チアミンとはビタミンB1のことです。
エネルギーの産出・代謝など多くの生化学反応に関与しており、神経・心臓の正常な機能に必要不可欠です。

哺乳動物は、体内でチアミンを生成することができないため、食物から摂取する必要があります。
欠乏すると疲労感に襲われ、重度の欠乏症(脚気=かっけ)では、神経・筋肉・心臓・脳に影響が及び、最終的には死に至ります。

生の魚介にはチアミナーゼが含まれる

「チアミナーゼ(旧称「アノイリナーゼ」)」は、淡水魚・貝類・微生物などに存在するビタミン B1分解酵素です。
腸管内で食物中のビタミンB1を破壊するため,チアミン欠乏症の原因となります。

この酵素は加熱すると失活するため、魚介は十分に加熱して与えます。
カニ・イカ・タコ・エビ・貝類にも、チアミナーゼは含まれています。
これらは「絶対に食べてはいけない」ものではありませんが、与えるメリットも少なく、消化不良やアレルギーの心配もあるため、あえて与える必要はありません。

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チアミン欠乏症は犬よりも猫の方が多い

猫は大量のビタミンを体内に蓄えられないことと、犬の5倍のチアミンを必要とすることから、犬よりもチアミン欠乏症が多く見られます。

のりまき
のりまき

どうしても愛犬と一緒に楽しみたい場合には、「よく加熱して」「甲羅や殻は取り除いて」「ほんの少し」を与えましょう!

あず
あず

ちなみにカニカマはチアミン欠乏症の心配はないよ!

のりまき
のりまき

ドライフードは長期保存中にチアミンが分解されやすいので、なるべく新しいフードを与えましょう!

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与えてもよいが注意が必要な魚介

「生では与えない」「塩分の摂りすぎに注意」のほか、加工品などは、添加物の多いものは与えないように気をつけます。

食品 生食 加熱 注意点
あなご × うなぎに比べると栄養素の量は劣るが、ビタミンA・E・Dが豊富
価格が手ごろなので、うなぎの代わりに与えるのもおすすめ
うなぎ × ミネラルやオメガ3脂肪酸であるDHAやEPAを含む
肝の部分は与えない
タレつきの場合はタレを洗い流し、小さく刻んで与える
脂質が多いため、与えすぎに注意する
かつおぶし
(鰹節)
塩分が多いので、ひとつまみ程度をトッピングやふりかけとして与える
魚卵 × 栄養素を豊富に含むが寄生虫の心配がある
人間用に加工されたものは塩分が多い
シーチキン
(ツナ)
食塩・オイル無添加の水煮缶または犬用ツナ缶を選ぶ
油漬けの場合は油を切り湯通しする
栄養素による効果はあまり期待できないので、トッピング程度に少量を与える
しらす × 塩分が多く、カルシウムも豊富なため与えすぎに注意する
生では与えずお湯を通して塩抜きする
ちくわ
かまぼこ
主な原料は白身魚のすり身だが、塩分・糖分・添加物が多いため、与えすぎには注意する
嗜好品として、たまの「おやつ」や「トッピング」で少量を与える
大量でなければ、拾い食いや盗み食い程度は心配ない
ちりめんじゃこ しらす干しをさらに乾燥させたもの
しらすと同様、塩分とカルシウムの摂りすぎに注意する
ブリ
(鰤)
× オメガ3脂肪酸であるDHAやEPAを含む
皮にはコラーゲンが豊富に含まれるので、細かく切って与えてもよい
生のブリは消化不良や急性チアミン欠乏症の原因になるので与えない
脂質が多いため、与えすぎに注意する
煮干し カルシウムが豊富なため、与えすぎは結石の原因になる可能性がある
無塩・ペット用の煮干しでも、毎日与えないように注意する

アナゴ(穴子)・ウナギ(鰻)は、かば焼きなどにされていることが多く、甘辛いタレがかかっています。
タレは洗い流し、小骨も多いので細かく刻んでから少量を与えましょう。

与えてもよい魚介

犬の中毒症状などが報告されておらず、栄養的にも優れている魚介です。
干物や缶詰、塩漬けされたものは塩分が高いため、与えてはいけません。
また「生でも与えることができる」ものでも、加熱して与えた方が無難です。

食品 生食 加熱 注意点
アジ
(鯵)
× オメガ3脂肪酸であるDHAやEPAを含む
干物は塩分が多いので与えない
加熱して骨を取り除き、身をほぐして与える
イワシ
(鰯)
× オメガ3脂肪酸であるDHAやEPAを含む
干物は塩分が多いので与えない
加熱して骨を取り除き、身をほぐして与える
細い骨が非常に多いので注意する
カツオ
(鰹)
× 様々な栄養素が含まれ、たんぱく質が非常に多い
初鰹は低脂肪・低カロリーでおすすめ
必ず加熱して与える
人間用に薬味(ネギ・ニンニクなど)を添えたものは絶対に与えない
カレイ
(鰈)
× 消化が良く、脂肪分が少なく、タンパク質を豊富に含む
骨が多いのできちんと取り除いて与える
サケ(鮭)
サーモン
× オメガ3脂肪酸であるDHAやEPAを含む
抗酸化作用を持つアスタキサンチンが豊富
日本ではまだ報告がないが、菌による鮭中毒が存在する
また生の鮭を食べた犬の死亡例もあり、必ず加熱して与えること
サバ
(鯖)
× 栄養が豊富で、関節の衰えや認知症の予防改善に役立つ
焼いて与えると脂質の摂りすぎになるため、ゆでること
小骨も含め硬い骨が多いので、必ず取り除き、身をほぐす
人間用の水煮缶は塩分が多いのでペット用の商品を与える
サンマ
(秋刀魚)
× オメガ3脂肪酸であるDHAやEPAを含む
魚介類の中では珍しい、老化防止が期待できるL-カルニチンを多く含む
味つけせず丸焼きしたものを、骨を取り除き、ほぐして与える
脂質が多いため、最初は少量を与えて様子を見る
タイ
(鯛)
× 消化が良く、脂肪分が少なく、タンパク質を豊富に含む
骨が多い上に硬いので、きちんと取り除いて与える
タラ
(鱈)
× 白身魚のため、青魚や赤魚に比べてアレルギーが起こりにくい
ビタミンE・カリウム・ヨウ素を含み動脈硬化の予防が期待できる
アニサキスが付着している場合があるので、必ず加熱する
塩ダラは与えない
マグロ
(鮪)
脂肪分が少ない赤身の部分を与える
タンパク質や良質な脂質が豊富に含まれる
新鮮な刺身用であれば生でもよいとされるが、なるべく加熱して与える
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骨の多い魚

イワシ(鰯)・アジ(鯵)・カレイ(鰈)・サバ(鯖)・タイ(鯛)など、骨の多い魚を与える時には、必ず骨を取り除き、身をほぐしましょう。
人間と同じように、犬も魚の骨が喉に刺さり、炎症を起こす場合があります。
特に犬は、ごはんを確認せず、丸のみする性質がありますので、飼い主が気をつけてあげましょう。

脂質を多く含む魚

サバ(鯖)・サンマ(秋刀魚)・マグロ(鮪)などは脂質を多く含むので、与える量に注意が必要です。

  エネルギー たんぱく質 脂質
  kcal g g
かつお/春獲り/生 114 25.8 0.5
かつお/秋獲り/生 165 25.0 6.2
さば/まさば/焼き 318 25.2 22.4
さば/たいせいようさば/焼き 370 21.8 29.3
さば/ごまさば/焼き 195 31.1 6.6
さんま/皮つき/焼き 313 23.3 22.8
くろまぐろ/赤身、生 125 26.4 1.4
くろまぐろ/脂身、生 344 20.1 27.5
まだい/養殖/皮つき/生 177 20.9 9.4
まだい/養殖/皮つき/焼き 210 22.7 12.0

マグロは赤身と脂身では、脂質とカロリーに大きく違いがあります。
愛犬に与える場合には、赤身を与えるようにしましょう。

鮭の中毒

サケ(鮭)・サーモンは犬が食べてもよい魚ですが、「鮭中毒」と呼ばれる中毒が存在しています。
ネオリケッチア属という微生物に感染した鮭などの淡水魚を生食することにより、引き起こされる中毒です。
鮭中毒に関係するネオリケッチア属は「ヘルミンテカ」「エロコミン」「SF agent」の3種です。
「SF agent」は、2016年にアメリカで報告された新種です。

ヘルミンテカ

「ネオリケッチア・ヘルミンテカ(Neorickettsia helminthoeca)」は、「鮭中毒吸虫」または「鮭住血吸虫」という寄生虫を介して犬・キツネ・コヨーテなどイヌ科動物に伝播します。

感染すると5~10日程度の潜伏期間を経て、高熱・嘔吐・下痢・粘血便などの症状が出ます。
早急に適切な治療を受けさせなければ、およそ90%の犬が感染後2週間以内に死亡すると言われる、致死率の高い病原体です。

ただし、ヘルミンテカを媒介する巻貝は、アメリカ西海岸にのみ生息しているため、日本は安全とされています。

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エロコミン

「ネオリケッチア・エロコミン(Neorickettsia elokominica)」は、イヌ科動物・アライグマ・フェレット・クマに「エロコミン吸虫熱」を引き起こします。
クマは重度の症状が出ると言われますが、犬の死亡率は10%程度と軽度です。

エロコミンも、媒介生物の生息地が限定されており、主にアメリカ西海岸を中心に感染例が報告されています。

SF agent

2016年にオレゴン州立大学の研究者が、鮭中毒吸虫の寄生した鮭から分離することに成功した新種のネオリケッチア属です。
病害は非常に軽く、感染しても無症状であったり、軽い発熱や腹痛を引き起こす程度であると言われています。適切な治療を受ければ、すぐに回復します。

ただSF agentfが媒介生物としている「Stellanchasmus falcatus」という吸虫は、1962年に日本でボラから分離されたことがあり、世界中に分布している可能性があります。

のりまき
のりまき

ちなみにボラの卵巣「カラスミ」の原料です♪

相方
相方

「臭い魚」「外道」の代表格です…

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鮭の与え方

生あるいは不十分な加熱状態の鮭は与えないようにします。
どうしても生で与えたい場合には、「最低2週間冷凍」すると、微生物が死滅します。

川沿いを散歩したり、川釣りに一緒に出かけた際には、愛犬が死んだ魚や釣りあげた魚を食べてしまわないように注意しましょう。
もし生の鮭を愛犬が食べてしまった場合は、7~10日間は様子を見ておきましょう。
大量に盗み食いされた際には、念のため動物病院を受診すると安心です。

あず
あず

鮭こっわ!

のりまき
のりまき

調べてみたら、思いのほか鮭中毒って深刻な中毒だった

相方
相方

日本では今のところ報告はないんだよね

あず
あず

でもアニサキスとか心配だから、魚介は火を通してちょうだい♥

相方
相方

あずの口に入ることはないから大丈夫…

のりまき
のりまき

次回の魚介類では「貝」を取り上げます!

参考:
MSDマニュアル家庭版-チアミン
pet smile news「犬は魚を食べてもいいの?生魚がNGの理由は寄生虫とチアミナーゼ!」
petokoto「犬は魚を食べても大丈夫! 注意点やおすすめの活用法を紹介」
子犬の記念日「犬が食べてはいけない魚 食べていい魚 貝類や海藻類は大丈夫?アニサキスに注意!」
わんちゃんホンポ「犬が食べても大丈夫な魚介類8つ」等
ロイヤルカナン「犬と猫の栄養成分辞典」
ノア動物病院「チアミン(ビタミンB1)欠乏症」
ブリタニカ国際大百科事典「アノイリナーゼ」
the WOOF「犬は鮭を食べると中毒を起こすの?~ワンコのサケ中毒・新知識~」
Stephen E. Greiman、Michael L. Kent、 John Betts、Deborah CochellTiah Sigler、Vasyl V. Tkach「Nanophyetus salmincola, vector of the salmon poisoning disease agent Neorickettsia helminthoeca, harbors a second pathogenic Neorickettsia species」2016.10.15
文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ほか