シリーズ化した「犬に与えてはいけない食べ物」。今回は「バター・生クリーム」です。
ほとんどの犬は乳製品が大好きです。でも無頓着に与えてよいかというと…ちょっと待って!
私たち人間も、日頃から何げなく口にして、愛犬にも与えている乳製品について、掘り下げていきます。
バター
バターは牛乳から分離させたクリームを凝縮させ、練って固めたものです。
広義には「何らかの乳」を原料としたものを指しますが、漢語では「牛酪」と表記され、日本では牛乳を原料としたものが一般的です。
100gのバターの原料として、牛乳は約4.8l必要となります。
ビタミンAをはじめ、各種ビタミンや栄養素を豊富に含みますが、80%以上が脂肪分です。
日本で市販されているバターは「無発酵・有塩」の商品が一般的です。
「塩分不使用バター」は、以前は「無塩バター」と呼ばれていましたが、塩を使用せずに製造しても、生乳に由来する微量の塩分が含まれるため、厚生労働省の栄養表示基準により「無塩」と表示できなくなっています。
発酵 | 無発酵 | |
有塩 | 発酵・有塩バター | 無発酵・有塩バター |
塩分不使用 | 発酵・塩分不使用バター | 無発酵・塩分不使用バター |
乳糖不耐性(乳糖不耐症)
乳糖(ラクトース)はほとんど含まれていませんが、「牛乳ほどではないが、バターも乳糖を含んでおり、乳糖不耐性である犬は下痢や嘔吐を引き起こす恐れがある」とする獣医師監修のサイトもありました。
バターに含まれる微量な乳糖(ラクトース)に反応する可能性もないとは言えないのかもしれません。
少量の牛乳でお腹を壊すような愛犬には、念のためバターも与えない方が無難でしょう。
乳糖不耐性(乳糖不耐症)のメカニズムについては「犬に与えてはいけない食べ物~乳製品~①牛乳」でご説明しています。
よろしければこちらもご覧ください。
乳製品アレルギー
バターにも「乳製品アレルギー」の心配はあります。
まず皮膚に症状が出て、かゆがることが多いので、誤ってバターを食べてしまった場合などは様子を見て、早めに動物病院を受診しましょう。
嘔吐・下痢などの胃腸症状のほか、重篤の場合、呼吸困難に陥ることもあります。
マーガリンはOK?
バターの代用品として使われることの多いマーガリン。
植物性油脂(もしくは動物性油脂)を原料とし、19世紀末にバターに似せて作られた加工品で、バターとは別物です。
かつて日本では「人造バター」と呼ばれていましたが、1952年に「マーガリン」と呼称を改められました。
トランス脂肪酸
マーガリンは、精製した油脂に発酵乳・食塩・ビタミン類などを加えて乳化し、練り合わせて作られます。
常温では液体の油脂を固めるために、製造の過程で水素添加されることにより、マーガリンに「トランス脂肪酸」が含まれることは知られています。
「トランス脂肪酸」は心臓疾患などの一因である可能性が指摘されており、米国では食品中に含まれる「トランス脂肪酸」の量の表示義務や使用規制が行われています。
日本でも2018年頃から「部分水素添加油脂を使用していないマーガリン」が販売されるようになりました。
基本的に犬にはNG
犬に対する中毒性は認められていませんので、少量を口にしたくらいでは問題ありません。
常食しない限りは「トランス脂肪酸」による影響もほぼないと言えます。
しかしバターと同じように、マーガリンも成分の80%が脂肪分ですので、肥満の観点からも積極的に与えたい食品ではありません。
バターもマーガリンも、ほんの少し食べたくらいは大丈夫ですが、うっかり大量に盗み食いされないように気をつけましょう!
それにどっちも高脂肪!消化できなくてお腹を下す可能性があるよ!
生クリーム
生乳や牛乳を分離して取り出した「乳脂肪のみ」を原料とした、「種類別:クリーム」と表示される省令上のクリームを一般に「生クリーム」として扱います。
商品によっては「純生」と表記してあるものもあります。
脂肪分が18-30%の「ライトクリーム」はコーヒー用、30-48%の「ヘビークリーム」はホイップ用と、用途目的で分類されています。
生クリームは、原則として牛乳成分に由来する商品です。
厚生労働省による”乳及び乳製品の成分規格等に関する省令”においては「生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、乳脂肪分を18.0%以上にしたもの」という基準が定められています。
バターと同様に、乳糖はほとんど含まれていないとされていますが、乳糖不耐性の犬が口にした場合、微量の乳糖であってもお腹を壊す可能性があると指摘する声もあります。
また生クリームは100gあたり乳脂肪分が45gも含まれています。
バターほど高脂肪ではありませんが、やはり脂肪の摂り過ぎによる肥満や、不消化による下痢につながります。
さらに生クリームは、そのまま摂取することは稀で、必ず砂糖など糖類を加えます。
犬は甘いものも好きですが、基本的に不必要なものです。
愛犬の健康のために、なるべく与えないようにしましょう。
犬用ケーキ
今や様々な犬用のケーキが市販されています。
主原料に肉や魚などを使用したもの、さつまいもやカボチャを使用したもの、スポンジケーキやクリームを使用したものなど、愛犬の嗜好やアレルギーに応じたケーキを選ぶことができます。
飼い主が愛犬と一緒に食べることができるとされる商品は、大体がスポンジケーキ+クリームという、人間用のケーキと外見が同じタイプです。
植物性の材料が使用されることが多いようです。
スポンジケーキには小麦粉・米粉・大豆粉など、クリームには豆乳・ヨーグルトなどが使われます。
甘さも犬に合わせて控えめにされています。
ちなみに、のりまき家の愛犬あずきには、フード以外は基本的に与えていません。
特別なごほうびおやつも、犬用のささみチップや牛タン皮などにしています。
「手作りであろうがなかろうが、ケーキなどもってのほか!まだ早い!」という飼い主側の方針により、あずきがケーキを口にするのはシニア以降のことであると思われます。笑
当然ながらチョコレートケーキはNG!
豆乳クリームには注意
犬用ケーキの原材料に「豆乳」または「豆乳クリーム」が表示されている場合、当然ですが「大豆アレルギー」の愛犬には与えることができません。
またケーキ自体は無添加とされている場合でも、使用している「豆乳クリーム」に添加物が使われていることがあります。
市販の豆乳クリームは、植物性油脂・乳化剤・安定剤・香料などが使われていることが多いのです。
添加物が気になるけれど、どうしても愛犬と一緒にケーキが食べたい時は、クリームを手作りすることもできます。
スポンジケーキは、小麦粉アレルギーがなければ市販品を使ったり、パンケーキを土台にしても。
漫画家の青沼貴子さんは、愛犬のジュラ(ミニチュア・ダックスフンド)に、人間用のケーキをほんの少し与えていらっしゃいました。
お誕生日など、年に数回しか与えないのであれば、そういう選択もあるのかもしれませんね。
青沼さんちの犬は腹黒だ(図に乗って5年目) (Sukupara selection) [ 青沼貴子 ] 価格:1,100円 |
参考までに手作りクリームの作り方をご紹介しておきます。
人間用のレシピですので、愛犬に与える場合は少量にとどめるか、砂糖の量を加減してください。
手作り豆乳クリーム
豆乳 100ml
砂糖 大さじ3~
レモン果汁 小さじ1
バニラエッセンスまたはバニラオイル 好みで
- レモン汁以外の材料をハンドミキサーで攪拌する
- レモン汁を加え再度ハンドミキサーで攪拌する
- ホイップクリームほどの固さになれば完成
当然ですが生クリームのようなコクはなく、ゆるめです。
生クリームほど扱いやすくはなく、分離することもあります。
代用品として捉えた方がいいと思います。
作ってはみたけど、やっぱり生クリームの方が断然おいしかった…
まぁヘルシー志向か乳製品アレルギーのある人向けだよね…
手作り豆腐クリーム
豆腐 150g(1/2丁)
ヨーグルト 20g
メープルシロップ 大さじ1と1/2
レモン果汁 小さじ1/4
レモン果皮 2×3cm
塩 小さじ1/6
- 豆腐を耐熱容器に入れてラップをし、500Wの電子レンジで2分加熱する
- ざるに上げて表面の水気を拭く
- 材料をすべて合わせ、ハンドミキサーやブレンダーか、フードプロセッサーでなめらかになるまで攪拌する
井出杏海『魔法の豆腐クリームレシピ』より
加熱することで豆腐臭さがなくなり、固さも出ます。
気にならない人は、水切りした豆腐(キッチンペーパーで豆腐を包み、お皿などで重しをして30分ほど置く)に、ヨーグルトとメープルシロップまたはハチミツを加えてよく混ぜたものでもOK。
これは手間がかかる分おいしい!
ヨーグルト・レモン果汁の代わりに、ココアを大さじ1加えると、チョコクリーム風になります♥
手作りヨーグルトクリーム
プレーンヨーグルト 100g
生クリーム 50ml
砂糖 大さじ2~
- 材料をすべて混ぜ合わせる
- ざるに二重にキッチンペーパーを敷く
- 一晩水切りして取り出し、なめらかになるまで混ぜる
のりまき家では、ティラミスを作る時に、マスカルポーネチーズの代わりに使っています。
ヨーグルトだけ水切りして、後で生クリームや砂糖を加えてもOK。
キッチンペーパーは1枚だと破れるので必ず二重に!
あっさりめなのにほどよくコクもあり、コレで作ったティラミスはめちゃウマ♥
まとめ
バターも生クリームも、犬にとって絶対に与えてはいけない食品ではありませんが、与える必要もありません。
乳製品アレルギーの恐れがあり、かつ高脂肪のため、体調不良や肥満につながります。
牛乳 | 低脂肪乳 | 生クリーム | 有塩バター | マーガリン | |
カロリー/kcal | 67.0 | 46.0 | 433.0 | 717.0 | 717.0 |
炭水化物/g | 4.8 | 5.5 | 3.1 | 0.1 | 0.7 |
脂肪/g | 3.8 | 1.0 | 45.0 | 81.1 | 80.7 |
タンパク質/g | 3.3 | 3.8 | 2.0 | 0.9 | 0.2 |
ナトリウム/mg | 41.0 | 60.0 | 27.0 | 714.0 | 751.0 |
カリウム/mg | 150.0 | 190.0 | 80.0 | 24.0 | 18.0 |
カルシウム/mg | 110.0 | 130.0 | 60.0 | 24.0 | 3.0 |
マグネシウム/mg | 10.0 | 14.0 | 4.0 | 2.0 | 3.0 |
リン/mg | 93.0 | 90.0 | 50.0 | 24.0 | 5.0 |
鉄/mg | 0.0 | 0.1 | 0.1 | 0.0 | 0.1 |
コレステロール/mg | 12.0 | 6.0 | 120.0 | 215.0 | 5.0 |
100gあたりの成分
文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)
愛犬のおねだりに負けて与えてしまう場合でも、「無糖で」「ほんのごくたまに」「ごほうびやお祝いとして」与えるくらいにしておきましょう。
飼い主さんの健康のためにも、クリームを手作りした時に、ちょっぴり愛犬にもおすそわけする程度がよいかもしれません
あたしも甘いもの食べてみたいな~
果物や野菜だってもらったことない…
年寄りになったらね♥(今、人間用の食べ物の味を覚えさせたら、どんな恐ろしい状況になるか…)
参考:
山梨医科大学名誉教授 佐藤章夫『乳糖分解酵素(ラクターゼ)活性持続症』
食物アレルギー研究会『食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017』「牛乳アレルギー」
日本先天代謝異常学会『診療ガイドライン-ガラクトース血症』
広島大学『ガラクトース血症』
中外医学社『栄養素の代謝と必要量』「糖質(炭水化物)」
内科学 第10版『先天性糖代謝異常症』
NPO法人 チーズプロフェッショナル協会『乳科学 マルド博士のミルク語り』「乳糖耐性の謎」
アナフィラキシーってなあに.jp『原因別アナフィラキシー|食物アレルギー』「牛乳・乳製品」
All About「犬に牛乳・生クリームを与えても大丈夫?」
ふれあい牧場Community Farm「牛乳からできる製品」
わんちゃんホンポ『犬が食べてはいけないもの一覧』
わんちゃんホンポ『【獣医師監修】犬にバターを与えても大丈夫?食べていいもの悪いもの』
子犬のへや『犬の毒になる食べ物・完全ガイド~これを食べさせては危険!』
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ほか