PR

ラブラドール・レトリーバーってこんな犬種①ラブラドール・レトリーバーの歴史

ラブのトリセツ
この記事は約8分で読めます。
Sponsored Links

今回は、現在のラブラドール・レトリーバーが犬種として完成するまでの歴史について書いています。

原産地と祖先

ラブラドール・レトリーバーの故郷は、カナダの東海岸に位置するニューファンドランド島です。
沖合の海域は、世界屈指の漁場として名高いグランドバンクです。
原産地については、祖先犬を改良したイギリスであるとする説もあります。

16世紀頃、ニューファンドランド島に入植した人々が、ウォータードッグタイプの犬とニューファンドランド犬を交配させて「セント・ジョンズ・レトリーバー」(または「セント・ジョンズ・ウォーター・ドッグ」)という犬種を作り出しました。
この犬種については、イングランド、アイルランド、ポルトガルなどで飼育されていた使役犬のミックス犬(雑種犬)ではないかという説もあります。この場合、ニューファンドランド犬は逆に、セント・ジョンズ・レトリーバーと、ポルトガル人漁師がニューファンドランド島に持ち込んだマスティフとの交配によって生まれた犬種だと考えられています。

セント・ジョンズ・レトリーバーは、丈夫で能力も高い上に作業を好み、忠誠心も厚く、猟師や漁師に重宝されていたといいます。
やや小柄で短毛のセント・ジョンズ・レトリーバーが漁に用いられ、海中の魚網の回収や、小舟の牽引、網からこぼれ落ちたニシンやタラの回収といった、様々な作業を担っていました。
このセント・ジョンズ・レトリーバーが、現在のラブラドール・レトリーバーの祖先となっています。

セント・ジョンズ・レトリーバーの「ネル」(1856-1867年頃)

セント・ジョンズ・レトリーバーは、ほとんどの個体が黒の毛色で、胸・脚・あご・マズル(鼻先)がホワイトの被毛という外見的特徴を持っていました。
そのタキシード模様とも言われる被毛の特徴は、現在のラブラドール・レトリーバーの血をひく雑種犬に現れることがあります。また純血種のラブラドール・レトリーバーの胸や脚などにも、ホワイトの斑点などが見られることもあります。

Sponsored Links

イギリスへ輸入

セント・ジョンズ・レトリーバーがイングランドに持ち込まれたのは19世紀初頭、1820年頃のことです。
その能力の高さはそれ以前に知られており、当時の紳士階級(上流階級)の間では、水鳥猟に秀でた狩猟犬として評価されていました。
当時、ニューファンドランド島との漁業貿易が盛んだった、イングランドのドーセット州の港湾都市プールへ多くのセント・ジョンズ・レトリーバーが持ち込まれ、繁殖する犬舎も存在していたようです。

英国本土に、塩ダラ運搬船から泳いで上陸するセント・ジョンズ・レトリーバーを見たマルムズベリー伯爵が、直ちにこの犬種数頭を輸入する手配をしたというのは、有名な逸話です。
マルムズベリー伯爵家は、2代にわたり、鴨猟のためにセント・ジョンズ・レトリーバー系の猟犬を繁殖しており、改良と血統の確立に貢献しました。
1880年代にマルムズベリー伯家からバクルー公家に贈られ、繁殖に使われたバクルー・エイヴォンネッドという犬が、現在のラブラドール・レトリーバーの直接の祖先であると考えられています。

現在のラブラドール・レトリーバーの直接の祖先「バクルー・エイヴォン」(1885年頃)

イギリスに限りませんが、当時の上流階級の間では、より能力の高い猟犬を持つことがステイタスとされていました。
優秀な犬を手に入れるばかりでなく、自ら作出する場合も多く、「セント・ジョンズ・レトリーバー」の名付け親とされるホーカー大佐(イギリス人)もその一人で、フラットコーテッド・レトリーバーの祖を築き上げています。

あず
あず

初代マルムズベリー伯爵は、バッハみたいな髪型の超イケメンだよ!

ラブラドール・レトリーバーの名前の由来

ラブラドール・レトリーバーの元となった犬、セント・ジョンズ・レトリーバーがイングランドに持ち込まれた時にはすでに、ニューファンドランド犬も持ち込まれていました。
そのニューファンドランド犬と区別するために、セント・ジョンズ・レトリーバーは「セント・ジョンズ・レトリーバー」「セント・ジョンズ・ウォーター・ドッグ」の他に、「レッサー・ニューファンドランド(小さなニューファンドランド)」と呼ばれていました。

現在、ニューファンドランド島はニューファンドランド・ラブラドール州(2001年に改称)に属していますが、当時はニューファンドランド州と呼ばれていました。
またセント・ジョンズ・レトリーバーの由来となった、ニューファンドランド・ラブラドール州の州都でもある「セント・ジョンズ」は、実はラブラドール半島ではなく、ニューファンドランド島の南東に位置するアヴァロン半島にあります。
セント・ジョンズ・レトリーバーは、厳密にはラブラドール半島の出身ではないのですが、海域がラブラドル海と呼ばれており、当時のイギリスでは「ラブラドール地方から来た犬」として「ラブラドール」と呼ばれるようになったようです。

あず
あず

セント・ジョンズは世界一霧の深い街としてギネス世界記録に認定されているよ!

セント・ジョンズ・レトリーバーの苦難

その能力が高く評価されていたセント・ジョンズ・レトリーバーですが、衰退の一途をたどります。
当時のイングランドでは、少数ながらセント・ジョンズ・レトリーバーを繁殖する犬舎が存在しており、マルムズベリー伯爵のような熱心な愛好家もいました。
しかし、狂犬病の検疫を目的とした犬の輸出入制限が行われるようになり、セント・ジョンズ・レトリーバーは徐々に姿を消していきました。

一方で、ニューファンドランド島のセント・ジョンズ・レトリーバーは、のちに逆輸入されたラブラドール・レトリーバーの人気に押され、徐々に活躍の場を奪われていきました。
羊畜産保護政策や不況、犬にかかる重税なども逆風となりました。
また異種交配による雑種化が進み、純血の犬は極端に頭数を減らしていきました。そのため、すでに絶滅したと見る専門家もいました。

しかし1980年代に、カナダの辺地で生存していた数頭の純血のセント・ジョンズ・レトリーバーが発見され、この犬たちを使った種の再生活動が行われるようになりました。数人のブリーダーが尽力していますが、復刻された犬の頭数はまだ少なく、カナダ以外ではあまり知られていません。

Sponsored Links

ラブラドール・レトリーバーの普及

世界で最も人気の犬種

ラブラドール・レトリーバーは1903年に犬種としてケネルクラブに登録されて以来、世界中で愛されるようになりました。

2006年の時点では、以下のような輝かしい結果となっています。

●世界で最も飼育頭数の多い犬種
●オーストラリア・カナダ・イスラエル・ニュージーランド・イギリス・アメリカで飼育頭数が1位
●各種の身体障害者補助犬としての登録頭数は、アメリカ、オーストラリアなど多くの国で1位
●警察犬などの公的な用途に使役されている頭数も多くの国で1位
アメリカの盲導犬のおよそ60%から70%を占める
●オーストラリア・ナショナル・ケネル・カウンシルが制定している「狩猟犬の殿堂」に登録されている13頭のうち7頭を占める

イギリス・アメリカでは、多くの年度でラブラドール・レトリーバーが登録頭数1位を占めます。フランス・オーストラリア・カナダ・スウェーデン・フィンランドなど、多くの先進国でも常に上位の安定した人気を誇ります。

2013年のFCI(国際畜犬連盟)によると、世界25か国の登録頭数を組み合わせた統計ではラブラドール・レトリーバーが第1位の191,988頭でした。
第2位はジャーマン・シェパード・ドッグですが、登録頭数は129,186頭。ラブラドール・レトリーバーと62,802頭もの差が見られました。
ちなみに第3位のプードルとシェパードの差は10,533頭です。
トップ5は以下の表をご覧ください。

FCI(国際畜犬連盟)による世界25か国の登録頭数を組み合わせた統計<2013年>
順位 犬種名 登録頭数
1 ラブラドール・レトリーバー 191,988
2 ジャーマン・シェパード・ドッグ 129,186
3 プードル(すべてのサイズ) 118,653
4 チワワ 107,114
5 ゴールデン・レトリーバー 92,994

仕事内容の変化

ラブラドール・レトリーバーは、祖先犬セント・ジョンズ・レトリーバーの頃から従事していた、漁の手伝いはもちろん、水鳥の回収など猟でも活躍してきました。
軍用犬に使用される悲しい側面もありますが、時代の変化とともに、ラブラドール・レトリーバーの仕事も変わっていきました。
それでも常に、人間のそばで働き続けています。

福祉分野
盲導犬・介助犬・聴導犬
医療分野
てんかん予知犬・ガン探知(予知)犬・低血糖アラート犬・マラリア探知犬
特殊分野
災害救助犬・警察犬・麻薬探知犬・検疫探知犬・軍用犬

日本の盲導犬第1号はジャーマン・シェパード・ドッグでしたが、今ではラブラドール・レトリーバーが主流になっています。
空港などで活躍する麻薬探知犬にも、ラブラドール・レトリーバーが多く採用されるようになりました。
それは犬が苦手な人に恐怖感や不快感を、また周囲に威圧感を与えない、優しい印象の犬種が必要とされるようになっているためです。

そして個人的には最も重要な仕事。
それは家庭犬としてのラブラドール・レトリーバーです。
のりまき家の愛犬、黒ラブの「あずき」は、盲導犬のラブラドールのイメージとはかけ離れた、やんちゃで落ち着きのない食欲&イタズラ大魔王。笑
またラブラドールらしくなく、他の犬や人が苦手です。
それでも家族を疑うことを知らず、「楽しい」「嬉しい」「大好き」「おいしい(笑)」という感情しかない陽性の性格は、いつも飼い主ズを和ませ、癒してくれます。
天性のセラピー犬。それがラブラドールの最大の特性かもしれません。

2019年春あずき2歳

参考:
最新 世界の犬種犬図鑑』岡田りか子/誠文堂新光社
『決定版 ラブラドール・リトリーバーと暮らす』愛犬の友編集部編/誠文堂新光社
『レトリーバーファンSpecial』誠文堂新光社
『日本と世界の犬のカタログ』成美堂出版
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ほか